ケニアで「美の基準」に変化、減量薬が人気、課題も
ケニアでは今、美の基準と健康意識が大きく変わりつつある。
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ケニアで減量治療や美容目的の体形改善を求める人が急増している。かつては太っていることが富や成功の象徴と見なされる文化があったが、近年は健康意識の高まりやSNSの影響を背景に、美の基準が変化しつつある。手術や薬による減量治療の需要が拡大し、医療機関で患者数が急増しているという。
首都ナイロビにある減量専門施設「ナイロビ・バリアトリックセンター」では、ここ数年で患者が大幅に増え、現在は1日に10~15人が診察を受けるほどの盛況となっている。30年前の開設当初は利用者がほとんどいなかったが、現在は減量手術や薬物治療、カウンセリングを求める人が絶えない。医師はこの状況を「ブーム」と表現している。
背景には社会意識の変化がある。ケニアでは以前、太っていることは裕福さや社会的地位の象徴と考えられてきた。しかし、都市化や生活習慣の変化に伴い肥満が健康問題として認識されるようになり、医療関係者は「肥満は富の象徴ではなく健康問題だと理解され始めている」と指摘する。
実際、2022年の調査では都市部の女性の半数以上、男性の約4分の1が過体重または肥満と診断され、保健当局は高血圧や糖尿病などの生活習慣病の増加を懸念している。農村部でも女性の39%、男性の14%が同様の状態とされ、肥満は全国的な問題になりつつある。
減量の方法も多様化している。近年は糖尿病治療薬として開発された注射薬セマグルチドを使った減量治療が広まり、オゼンピックなどの薬が体重管理の目的で処方されるケースも増えている。この薬は胃の働きや満腹感に関わるホルモンに作用し、食欲を抑える効果がある。
SNSもブームを後押ししている。インフルエンサーが自身の減量や美容整形の体験を公開することで関心が高まり、若者を中心に「理想の体形」を追求する動きが広がっている。一方で、こうした行動に対しては批判や議論も起きている。体形を巡る誹謗中傷がネット上で見られ、社会問題になっている。
減量治療は高額である点も課題だ。手術や薬物治療を含むプログラムは最大で7000ドル程度かかり、多くのケニア人にとっては簡単に利用できるものではない。それでも需要は増え続け、専門家は無認可薬や不正な医療サービスの拡大を懸念している。
医師らも減量薬の乱用や安価な非正規製品の利用は健康被害につながる可能性があると警告する。政府の医薬品規制当局は処方箋なしでの使用や誤った利用は重大な健康リスクを伴うと注意を呼びかけている。
ケニアでは今、美の基準と健康意識が大きく変わりつつある。肥満を富の象徴とする従来の価値観から、健康的で引き締まった体形を求める新しい価値観への転換が進む中、減量治療の需要は今後も増加するとみられている。
