米国、ルワンダにコンゴ東部からの部隊撤退迫る、和平交渉

トランプ政権はコンゴ東部での紛争を終わらせ、この地域の希少な鉱物資源(タンタル、金、コバルト、銅、リチウムなど)に関する協定を結び、欧米諸国の投資を呼び込みたいと考えている。
2025年2月4日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマ、ルワンダ軍の兵士(ロイター通信)

アフリカ中央部・コンゴ民主共和国と隣国ルワンダの和平交渉を仲介する米国がルワンダにコンゴ東部から部隊を撤退させるよう迫っている。

ロイター通信は11日、情報筋の話しとして、「米政府は両国の和平協定が成立する前に、戦闘が続くコンゴ東部からルワンダ軍を撤退させたいと考えている」と報じた。

ルワンダ政府の支援を受けるコンゴ最大の反政府勢力M23(3月23日運動)はコメントを出していない。

トランプ政権はコンゴ東部での紛争を終わらせ、この地域の希少な鉱物資源(タンタル、金、コバルト、銅、リチウムなど)に関する協定を結び、欧米諸国の投資を呼び込みたいと考えている。

コンゴ政府は東部紛争への対応に苦慮しており、鉱物資源と引き換えに、米国に安全保障を提供するよう求めてきた。

トランプ政権のブーロス(Massad Boulos)上級顧問は先月、ロイター通信のインタビューで、「米国は2ヶ月以内に和平協定を締結したいと考えている」と明らかにしていた。

M23が主導する「コンゴ川同盟」は1月末に東部の最大都市である北キブ州ゴマを占領。その後、東部第2の都市・南キブ州ブカブに進軍、制圧した。

それ以来、アフリカ諸国に加え、カタールと米国が和平に向けた協議を仲介している。

ゴマには国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)の本部と南部アフリカ地域圏の基地があり、郊外の避難民キャンプでは数百万人がテント生活を送っている。

コンゴ川同盟は3月、支配下に置いた北キブ州の要衝ワリカレから部隊を撤退させると表明。国連はこの決定を歓迎し、撤退を機に停戦交渉を加速させるよう促した。

しかし、M23はその後、国軍とその支援民兵がワリカレに攻撃ドローンを送り込んできたと主張。撤退を取り消した。

ワリカレの人口約1万5000人。ゴマの北西約125キロに位置し、第4の都市キサンガニの400キロ圏内にある。

東部4州の主要道路がワリカレを通過する。国軍はこの町を失ったことで、東部4州の主要都市にアクセスしづらくなった。

双方は紆余曲折の末、互いに歩み寄る姿勢を見せ、M23はワリカレから部隊を撤退させたとみられる。

アフリカ諸国の調停努力が頓挫する中、カタールは3月、コンゴのチセケディ(Félix Tshisekedi)大統領とルワンダのカガメ(Paul Kagame)大統領を招き、その後、仲介国のアンゴラと共に「即時かつ無条件の停戦」を求める共同声明を出した。

政府とM23は4月、和平に向けて協議を継続することで合意したが、それ以降も東部の広い範囲で戦闘が続いている。

M23はルワンダとウガンダの支援を受けていたコンゴのツチ族武装集団の元戦闘員で構成され、2009年3月に締結された和平協定により、コンゴ軍に編入された。

しかし、M23の戦闘員はコンゴ軍に編入された後もルワンダ国境付近で活動を続け、13年の紛争に敗れるとルワンダやウガンダに逃亡。21年11月頃から活動を活発化させ、北キブ州の複数の集落を占領した。

コンゴ、米国、国連安保理はルワンダ政府がM23を支援していると指摘。ルワンダは長年、この主張を否定してきた。

1994年のルワンダ大虐殺に関与したとされるフツ族の住民数千人がコンゴ東部に逃げ込んで以来、両国の関係は緊張状態にある。

M23はコンゴに逃げ込んだフツ族の掃討を目指しているものとみられる。ルワンダはコンゴ政府が組織的に大虐殺の加害者であるフツ族を匿っていると主張している。

ルワンダ大虐殺の犠牲者は80万~100万人と推定されている。フツ族の過激派はツチ族だけでなく、フツ族の穏健派も殺害した。

国連はコンゴ国内で活動するルワンダ兵を最大4000人と推定している。

政府とM23による戦争は世界最大級の人道危機に発展。700万人以上が避難を余儀なくされている。

国際社会はこの紛争が1990年代から2000年代の第2次コンゴ戦争のような規模に発展することを恐れている。この戦争では500万~600万人が死亡したと推定されている。

ロイター通信によると、米国は和平協定の草案で、協定締結の条件として、ルワンダに対し、コンゴから軍隊を完全撤退させることを求めている。

これは米当局者が起草したとされる。

この草案は4月にルビオ(Maro Rubio)米国務長官が両国の外相とワシントンDCで会談した際に署名した文書以上の内容となっている。その文書では、双方は互いの領土の完全性と主権を尊重した形で、あらゆる安全保障上の懸念に対処するとしていた。

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