◎2020年のクーデターで政権を握った軍政はフランスと距離を置き、ロシアとの関係を強化。民間軍事会社ワグネルと契約を結んだ。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は12日、ロシアの民間軍事会社ワグネルと契約を結ぶマリ軍政が昨年、ある集落で5日間にわたり民間人少なくとも500人を虐殺したと報告した。
OHCHRは12日に公表したレポートの中でこの暴力事件を詳述し、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が発表した300人を大きく上回る犠牲者が出たと説明した。
ターク(Volker Turk)高等弁務官はこの事件を「極めて不穏なもの」と表現している。
またターク氏は「武力紛争下での即決処刑、レイプ、拷問は戦争犯罪に相当し、状況によっては人道に対する罪にもなりうる」と非難した。
マリ軍政は昨年3月にこの集落で行ったとされる軍事作戦について、「イスラム過激派を無力化するものであり、国連調査官はこの集落に立ち入っていない」と主張している。
OHCHRはレポートの中で「被害者や目撃者から話を聞き、衛星画像を分析した」と述べている。
一方、マリの旧宗主国であるフランスはこの集落に攻め込んだマリ軍部隊がワグネルの支援を受けたと主張している。
OHCHRはこの作戦に「外国の傭兵部隊」が関与した証拠について詳述している。
OHCHRは目撃者などの話として、「住民は未知の言語を話す武装した白人部隊がマリ軍兵士と一緒に行動しているところを目撃した」と報告した。
マリを中心とするサヘル地域では国際テロ組織アルカイダやイスラム国(ISIS)系の過激派が猛威を振るっている。
マリ軍は2012年から近隣の同盟国およびフランスと共に過激派を取り締まってきた。この紛争に巻き込まれ難民になった民間人は数百万人、死者は1万人以上と推定されている。
2020年のクーデターで政権を握った軍政はフランスと距離を置き、ロシアとの関係を強化。ワグネルと契約を結んだ。
軍政を率いるゴイタ(Assimi Goita)大佐はワグネルとのつながりを否定し、欧米諸国を非難している。