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国連「奴隷制は人類史上最も深刻な犯罪のひとつ」賠償検討求める決議を採択


決議は奴隷制と植民地主義によって生じた経済的・社会的格差が今日まで残存していると強調し、被害の回復に向けた包括的な対応を求めている。
大英帝国の奴隷船(Getty Images)

国連総会は25日、アフリカ人を対象とした奴隷貿易と人身売買をめぐる「歴史的な不正義」の是正に向け、各国に賠償を検討するよう求める決議を採択した。決議は大西洋奴隷貿易と奴隷制度を人類史上最も深刻な犯罪の一つと位置づけ、その長期的影響が現在も続いていると指摘する内容である。採決では多数の加盟国が賛成した一方、米国など一部の国が反対し、欧州諸国の多くは棄権に回るなど、国際社会の立場の隔たりも浮き彫りとなった。

決議は奴隷制と植民地主義によって生じた経済的・社会的格差が今日まで残存していると強調し、被害の回復に向けた包括的な対応を求めている。具体的には、公式謝罪や金銭的補償に加え、教育機会の拡充、制度的差別の撤廃、さらには植民地期に持ち出された文化財の返還などが挙げられている。とりわけ文化財については、出自国への迅速かつ無条件の返還を求める姿勢が明確に示された。

この決議を主導したアフリカ諸国やカリブ海諸国は、奴隷制の影響が貧困や不平等、人種差別といった現代の問題と深く結びついていると訴えてきた。長年にわたり国際社会に賠償の議論を促してきたこれらの国々にとって、今回の採択は象徴的かつ政治的に重要な前進と受け止められている。

一方で、反対や慎重姿勢を示した国々は、歴史的責任を現在の国家にどのように帰属させるかという法的・政治的課題を指摘している。また、特定の歴史的犯罪を強調することが他の悲劇との比較や序列化につながる可能性への懸念も示された。こうした立場の違いは、賠償問題が単なる道義的議論にとどまらず、現実の外交や国内政治に大きく影響する複雑なテーマであることを物語っている。

今回の決議に法的拘束力はないものの、国連として明確に賠償の必要性に言及した点は大きな意味を持つ。国際社会における歴史認識の共有を進めるとともに、具体的な政策や対話を促す契機となる可能性があるためである。また決議は過去の奴隷制だけでなく、現代における人身取引や強制労働といった問題にも言及し、歴史と現在を結びつけた包括的な対応の必要性を訴えている。

奴隷制の遺産をどのように評価し、どのような形で償うべきかという問いに対し、国際的な合意はなお形成されていない。しかし今回の採択は、その議論を一段と前進させる契機となるものであり、正義と和解に向けた長期的な取り組みの重要性を改めて示したと言える。

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