◎サイード大統領は2021年7月末に当時の首相を解任したうえで議会を閉鎖し、権力を手中に収めた。
チュニジアの最大野党であるイスラム政党「アンナハダ(Ennahda)」は14日、サイード(Kais Saied)大統領の命を受けた治安当局者が同党の指導者を逮捕したと発表した。
アンナハダの弁護士によると、武装した治安部隊は首都チュニスにあるビリ(Noureddine Bhiri)議員の自宅を13日遅くに急襲し、陰謀罪で逮捕したという。
また弁護士は独立系ラジオ局の責任者も14日未明に逮捕されたと明らかにした。
政府はこの逮捕劇に関する声明を一切出していない。
サイード氏は2021年7月末に当時の首相を解任したうえで議会を閉鎖し、権力を手中に収めた。
野党と活動家はサイード氏の強硬措置をクーデターと非難し、各地で抗議デモを続けている。議会は昨年3月に解体され、12月に議会選が行われたものの、投票率は8.8%にとどまり、先月の第2回投票も悲惨な結果に終わった。
アンナハダの弁護士によると、同党の高官を含む野党指導者数人も13日に逮捕されたという。
野党は連合を組んで議会選をボイコットし、サイード氏に辞任を求めている。弁護士によると、ビリ氏を除く高官らはサイード氏の圧政に対抗する方法を協議する会合を開いていたところ、治安当局に拘束されたという。
逮捕劇の前夜、サイード氏は法相に対し、「何年も引きずっている法的案件」を速やかに解消するよう要請していた。これは野党指導者や独立系メディア関係者の逮捕を意味するとみられる。
サイード氏は野党指導者を「汚職にまみれた反逆者」と呼び、国内で不満をまき散らし、怒りと暴力を煽り、食料や燃料危機を引き起こそうとしていると非難している。
アンナハダは公式ウェブサイトに声明を投稿。一斉逮捕を非難し、「サイードは経済・政治危機から国民の目をそらすために、反対派を拉致した」と断じた。
またアンナハダは拘束したビリ氏らを速やかに解放するよう要求した。
チュニジアでは食料・燃料価格、若者の失業率が高止まりし、経済危機に拍車をかけている。