チュニジア・ケルアンで警察とデモ隊が衝突、緊張高まる
今回の騒乱は来年1月に予定される2011年の「ジャスミン革命」記念日を控え、全国的な不満が広がる懸念を強めている。
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チュニジア中央部ケルアンで13日、男性の死をきっかけに警察とデモ隊が衝突し、市内の複数の通りで抗議活動が激化した。衝突は2夜連続で発生し、石や火炎瓶、発炎筒が投げられ、タイヤが燃やされるなどして通りが封鎖された。治安当局は催涙ガスを使用して群衆の排除を試みた。
今回の騒乱は来年1月に予定される2011年の「ジャスミン革命」記念日を控え、全国的な不満が広がる懸念を強めている。
衝突の発端となったのは数日前に発生した男性の死亡事件である。亡くなった男性は無免許でオートバイに乗っていたとされ、警察車両に追跡された後に取り押さえられ、暴行を受けたとの家族の主張がある。
その後、病院に運ばれ退院したものの、12日に容体が急変し、亡くなった。警察当局はコメントを出していないが、遺族は責任者の追及と説明を求めており、進展しない場合には抗議デモを拡大するよう呼びかけている。
目撃者によると、若者らは通りで警察に向けて石や火炎瓶を投げ、炎上したタイヤで道路を封鎖した。警察はこれに対し催涙ガスを使用し、衝突は夜遅くまで続いたという。
騒動を受け、ケルアンの知事は13日夜に遺族宅を訪問し、今回の事件の状況を調査し責任の所在を明らかにする意向を示した。知事の訪問は地元住民に対する当局の説明責任の重要性を強調するものであり、緊張緩和を図る試みとみられている。
今回の抗議は単発の事件にとどまらず、チュニジア全土で広がる不満の一端を反映している。南部では数週間にわたり数千人規模のデモが続き、化学工場の閉鎖を求める環境運動が続いている。また、労働組合UGTTは来月全国ストライキを呼びかけており、政治・社会的な緊張が高まっている状況だ。
政治情勢も緊迫している。サイード(Kais Saied)大統領は2021年に議会を解散し、政令による統治を開始。これを「汚職と無秩序の根絶のため」と説明する一方、野党や人権団体は「クーデター」と批判している。批評家らは司法や警察力を用いて反対意見を封じ込めていると指摘、サイード氏はこれを否定している。
こうした背景の中、抗議デモは単なる警察暴力への抗議を超え、民主主義や統治のあり方を巡る国民の幅広い不満を映し出している。チュニジアは「アラブの春」の発祥地として長年にわたり政治的な自由と安定の間で揺れ動いてきたが、今回の一連の抗議がどのような影響をもたらすかは依然として不透明である。
