◎略奪者は栄養失調に苦しむ子供や女性のために準備されたサプリメントを含む多くの必需品を略奪した。
国連によると、エチオピア北部の住民のために割り当てられた世界食糧計画(WFP)の食糧倉庫が反政府勢力の襲撃を受け、備蓄していた必需品の多くが略奪されたという。
国連のステファン・ドゥジャリク報道官は9日の声明で、ティグライ国防軍(TDF)の略奪者が北部アムハラ州コムボルチャにある食糧倉庫を襲い、現地職員を拘束したと明らかにした。
AFP通信などによると、略奪者は栄養失調に苦しむ子供や女性のために準備されたサプリメントを含む多くの必需品を略奪したという。
ドゥジャリク報道官は、人道支援のために使用していたWFPのトラック3台も押収されたと述べた。報道官によると、略奪された食糧の量はまだ把握できていないという。
略奪の結果、WFPは北部地域の主要な町のひとつであるコムボルチャとデセでの食糧配給を停止した。
国軍と北部地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は2020年11月に本格化し、これまでに民間人数万人が死亡、数百万人が国内避難民になり、数万人が隣国スーダンに逃亡した。
国軍は昨年11月末にTPLFの拠点であるティグライ地域の大半を奪取したが、TPLFはオロモ解放戦線などの主要な反政府勢力と同盟を結んでTDFを結成し、6月の奇襲攻撃で地域の支配権を取り戻した。
TDFはティグライ地域に隣接するアムハラ州とアファール州の大半を支配下に置いている。エチオピアのアビィ・アハメド首相は先月末、最前線で指揮を執ると宣言し、出陣した。
ドゥジャリク報道官は声明の中で、「ティグライ州、アムハラ州、アファール州の推定940万人が食糧援助を必要とし、その多くが餓死の危機に瀕している」と述べた。WFPによると、各地域で援助を必要としている住民はティグライ州が約520万人、アムハラ州が約370万人、アファール州で推定54万人。
ドゥジャリク報道官は略奪時の状況について、「WFPの現地職員は銃を突き付けられ、どうすることもできなかった」と述べた。
TPLFの指導者であるデブレツィオン・ゲブレミチャエル将軍は略奪に関するコメントや声明を発表していない。
ドゥジャリク報道官は略奪を厳しく非難し、戦争当事者は国際人道法に基づき、人道支援要員の活動を尊重および保護しなければならないと強調した。「人道法は救援物資、設備、資材、ユニット、車両への攻撃、破壊、流用、略奪することを禁じています。略奪はエチオピア北部の飢餓を悪化させ、食糧不安を長引かせるでしょう」
またドゥジャリク報道官は、餓死寸前の人々を助けるために働いている職員への嫌がらせや脅迫は「人道に反する」と述べ、今回のような事件は国連を含む地域で活動している全ての人道支援団体に深刻な影響を与えると警告した。
コムボルチャの食糧倉庫で働いている女性はAFP通信のインタビューの中で、「TPLFは子供や妊婦のために準備したサプリメントを奪った」と述べた。「彼らは武装していたため、どうすることもできませんでした....」
国軍は先日、アムハラ州ラリベラにあるユネスコ世界遺産の町ラリベラを奪還したと発表したが、TPLFは戦略的な理由で一部地域を放棄しただけと主張している。
AFP通信によると、ラリベラの政府機関、空港、銀行、病院、その他の施設は略奪され尽くし、見るも無残な姿になっていたという。
国連は先月の声明で、3州の児童16~28%、ティグライとアムハラの妊婦のおよそ半分が深刻な栄養失調に苦しんでいると報告した。
北部地域の飢餓危機は過去10年で世界最悪と見なされており、国連は今年公表したレポートの中で40万人以上が年内に餓死する可能性があると警告した。