◎エチオピア政府は退役軍人に軍に再加入するよう促し、反政府勢力との首都決戦に備えるよう国民に呼びかけた。
2021年11月5日/ワシントンD.C. エチオピアの主要な野党グループと反政府勢力は政府に対抗する統一戦線を結成した(Gemunu Amarasinghe/AP通信)

11月5日、エチオピア政府は退役軍人に軍に再加入するよう促し、反政府勢力との首都決戦に備えるよう国民に呼びかけた。

国軍と北部ティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は1年前に本格化し、これまでに民間人数千人が死亡、数百万人が国内避難民になった。

国軍は昨年11月末にティグライ地域の大半をTPLFから奪取したが、TPLFはオロモ解放戦線などの反政府勢力と同盟を結んでティグライ国防軍(TDF)を結成し、6月の奇襲攻撃で地域の支配権を取り戻した。

TDFはティグライ地域に隣接するアムハラ州とアファール州の一部を支配下に置き、さらに首都アディスアベバから約400km離れた2つの都市を占領した。エチオピア政府は4日、首都近くのケミッセ市がTDFに占領されたことを認め、「TDFは首都の東と南の地域を支配下に置きつつある」と述べた。

米国大使館はエチオピア在住の米国民に国から避難するよう呼びかけた。

一方、主要な野党グループと反政府勢力は5日、アビィ・アハメド首相の追放を目指す統一戦線の結成に合意した。TPLFの高官で元外相のベルハネ・ゲブレ・クリストス氏はワシントンD.C.の記者団に対し、「政府の崩壊はエチオピアに変化をもたらすでしょう」と語った。

またクリストス氏は、統一戦線はアビィ政権を力もしくは交渉で追放し、暫定政府を樹立することを目的としていると述べた。「私たちはアビィ政権がもたらしたエチオピアの恐ろしい現状に終止符を打ちます...」

統一戦線には武闘派のオロモ解放戦線も参加している。

ティグライ地域で進行中の飢餓危機は過去10年で世界最悪と見なされており、国連は今年公表したレポートの中で40万人以上が年内に餓死する可能性があると警告した。

TPLFはアビィ首相に、ティグライ地域周辺の封鎖を解除し、国連や人道団体の支援を受け入れるよう圧力をかけてきた。しかし、TPLFがティグライの周辺州を占領下に置いた結果、幹線道路は閉鎖され、ティグライへのアクセスはより困難になったと伝えられている。

政府は2日に国家非常事態を宣言し、首都の住民に武器の登録を呼びかけ、地域をTDFから守る準備を進めるよう呼びかけた。アビィ首相の声明は国際社会に衝撃を与え、国連安全保障理事会は戦闘の即時終結を求める声明を5日午後に発表した。

主要メディアによると、常任理事国のロシアはアイルランドなどが起草した声明案を拒否し、厳しい文言は修正されたという。

アフリカ連合の指導者も緊急会合を開催し、首都決戦の回避に向けた協議を進めている。

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は4日の声明で双方に即時の停戦を呼びかけた。米国のジェフリー・フェルトマン特別特使は4日遅くから首都アディアベバでエチオピア政府高官、TPLF、オロモ解放戦線を含む反政府組織の関係者と政治的解決に向けた協議を行っていると伝えられている。

一部の専門家は、「エチオピア政府の退役軍人に向けた呼びかけは、首都決戦が現実味を帯びていることを示している」と指摘した。

アビィ首相は先日、フェイスブックに「テロリストを埋める」と投稿し、物議を醸した。フェイスブックはこの投稿をすでに削除している。

しかし、専門家たちはエチオピア軍は追い詰められている可能性が高いと指摘し、ソーシャルメディアには「民間人を戦闘に巻き込んではいけない」という警告が相次いで投稿された。

政府のケベデ・デシッサ報道官は5日、ロイター通信の取材に対し、「統一戦線は弱い」と述べた。「彼らは非常に弱いです。エチオピアで最も弱い政党のひとつでしょう。テロリストは首都に向かっていると主張していますが、私たちは各地域で起きている問題をすべて把握し、敵が嘘をついていると知っています...」

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は先月、ティグライ地域の住民のうち、子供を含む少なくとも40万人が餓死寸前の状態に追い詰められていると警告し、アビィ首相に人道物資の輸送を阻止しないよう求めた。

国連と人道団体によると、ティグライ地域の栄養失調レベルは2011年の夏頃から始まったソマリア大旱魃(かんばつ)と同じレベルだという。この飢饉におけるソマリアの犠牲者は半年で25万人を超えたと推定されている。

2021年5月11日/エチオピア、北部ティグライ地域の診療所、栄養失調の娘を抱く母親(Ben Curtis/AP通信)
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