SHARE:

タンザニアの主要都市が「ゴーストタウン」に、当局がパトロール強化

10月29日の選挙後、与党による一方的な勝利が宣言され、主要な野党候補が取り締まりの対象となり、投獄された。
2025年10月29日/タンザニア、ザンジバルの住宅地、政府に抗議するデモ参加者(ロイター通信)

タンザニアでは、10月末の大統領選挙の結果を巡る抗議を受け、主要都市の街路が「空っぽ」と言えるほど静まり返り、警察・軍兵士による厳重なパトロールが行われている。これは抗議活動を呼びかけた動きに対する当局の先制的な対応である。

10月29日の選挙後、与党による一方的な勝利が宣言され、主要な野党候補が取り締まりの対象となり、投獄された。この結果に反発した野党デモは暴力的なものとなり、数百人が死亡、2000人以上が逮捕され、車両・建物の放火など全国的に混乱が広がった。

こうした混乱を背景に、反政府の抗議を呼びかけていた市民や運動家らは独立記念日にあたる12月9日に新たなデモを行う構えを示していた。しかし、ハッサン(Samia Suluhu Hassan)大統領はこの動きをあらかじめ非合法と判断し、「クーデター未遂」とみなすと警告。国民に「自宅待機」を促す声明を出した。

9日朝、中心都市ダルエスサラームやドドマなどで警察車両や兵士、警察官による警備が確認され、重要な政府施設や党幹部のオフィスの周辺には道路封鎖や検問が設置された。

このため公共交通機関は停止され、通勤や通学を控える市民が多く、通常なら混雑する都市部は異様な静けさに包まれている。多くの住民が自宅にとどまり、街は「ゴーストタウン」のような様相を呈している。

一方、国内外の人権団体はこの取り締まりを強く批判している。ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルは平和的集会の権利を尊重すべきだと訴え、先の選挙後の暴力や拘束に関する独立した調査を求めている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)も治安部隊による過剰な力の使用を避け、緊張を高めないよう強く求めているとの声明を発表した。

このような情勢のなか、タンザニアでは抗議の自由、報道の自由、そして民主的手続きの公正さを巡る国内外の懸念が改めて浮き彫りになっている。政府が設置した調査委員会は選挙後の暴力や混乱についての事実確認を約束しているものの、現時点で報告書は公開されていない。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします