◎スエズ運河庁(SCA)のオサマ・ラベイ長官は、「当局は補償金9億1,600万ドル(約1,000億円)を正栄汽船に要求したが、その後、補償額は5億5,000万ドル(約600億円)まで引き下げられた」と述べた。
2021年3月25日/エジプト、スエズ運河の衛星写真(Cnes2021/AP通信/エアバスDS)

現地メディアによると、エジプトの裁判所は3月末にスエズ運河を約1週間封鎖したエバーギブン号の船主に対する訴訟を6月20日まで延期したという。

スエズ運河庁(SCA)と船主の補償交渉は現在も続いている。SCAのオサマ・ラベイ長官は先月放送された国営メディアのインタビューの中で、「エバーギブン号の所有者である正栄汽船が補償金を支払わない限り、エジプト政府は船を解放しない」と述べていた。

ラベイ長官は、「当局は補償金9億1,600万ドル(約1,000億円)を正栄汽船に要求したが、その後、補償額は5億5,000万ドル(約600億円)まで引き下げられた」と述べた。補償金の主な内訳は、エバーギブン号の救助活動費用、運河の停滞による様々な損失、座礁の影響でエジプト政府が失ったスエズ運河の通行料など。

現地メディアによると、正栄汽船と保険会社は、エジプト政府の要求額は高すぎると主張したという。正栄汽船は1億5,000万ドルの補償を申し出たが、SCAはこれを却下した。

SCAは5月29日の声明で、「船の所有者が補償金交渉を解決するための新たな提案を申し出たため、裁判所は審理を6月20日に延期した」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。

エバーギブン号には35億ドル(約3,900億円)相当の貨物が積み込まれているが、補償交渉が解決するまではグレートビター湖にとどまるよう命じられている。

エバーギブン号座礁事件は世界の海運に大きな影響を与え、数十億ドル相当の貨物を積み込んだ巨大貨物船数百隻がスエズ運河の北と南で待機を余儀なくされた。一部の貨物船は南アフリカの喜望峰ルートを選択せざるを得ず、追加の燃料費やその他の費用を計上させられたと伝えられている。

海運の専門、ロイズリストのデータによると、スエズ運河西ルートを通過する商品の価値は1日あたり約5,600億円、東ルートは約5,000億円にのぼり、運河を管理するエジプト政府は1日あたり最大15億円の収入を得ているという。2020年にスエズ運河を通過した船舶は約19,000隻だった。

エバーギブン号の所有者は正栄汽船だが、座礁させたのはドイツの企業(運航者は台湾の企業)であり、訴訟は複雑になる可能性が高いと伝えられている。

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