◎スエズ運河庁は超高層ビルサイズの巨大貨物船を動かすために大型タグボートを複数隻投入しているが、作業は思うように進んでいない。
スエズ運河庁によると、世界の海運を支えているスエズ運河を封鎖したエバーギブン号の撤去作業は困難を極めているという。同庁は超高層ビルサイズの巨大貨物船を動かすために大型タグボートを複数隻投入しているが、作業は思うように進んでいない。
国連のデータベースによると、エバーギブン号の所有者は愛媛県今治市に本拠を置く船舶リース会社の正栄汽船、運航者は台湾を拠点とする大手海運会社のエバーグリーンマリン社。運航管理会社はバーンハード・シャルト・シップマネジメント。建造は2018年、全長400m、幅59m、総重量約20万トン。一度に最大20,000個のコンテナを輸送できる。
中国からオランダのロッテルダムに向かっていたエバーギブン号は、3月23日午前7時40分頃にアジアとヨーロッパ間を最短ルートで結ぶスエズ運河のど真ん中で制御を失い、座礁した。それ以来、スエズ運河庁とエジプト当局は船首付近の掘削、タグボートによる牽引などで問題解決を試みているが、エバーギブン号は通せんぼを継続している。
スエズ運河庁は、25日早朝からエバーギブン号の撤去作業を再開したと述べた。
AP通信によると、メディアと話すことを許可されていない当局者は、匿名を条件に作業の進捗状況を簡単に説明したという。
当局者によると、撤去作業を行っている関係者たちは「船からコンテナを降ろすことだけは避けたい」と述べたという。「エバーギブン号のコンテナを下ろすには少なくとも2、3日かかるかもしれません」
「タグボートはエバーギブン号を牽引して船体を動かそうとしています。また、船首側ではバックホーで土砂を掘り牽引をサポートしていますが、総重量20万トンの巨体を動かすには至っていません」
エバーギブン号を管理するバーンハード・シャルト・シップマネジメントは声明で、「船員25人にケガはなく、責任は当社が負う」と述べた。同社によると、座礁した際、船にはエジプトの河川当局の乗組員2名も乗船していたという。
運河サービスプロバイダーのレス・エージェンシーズはAP通信の取材に対し、「地中海のポートサイド、紅海のポートスエズ、エジプトのグレートビター湖では、少なくとも150隻の貨物船が立ち往生を余儀なくされています」と述べた。
「スエズ運河の南側で立ち往生している貨物船は、一部運河を逆走してポートスエズに戻ります。あとはエバーギブン号の撤去を待つしかありません」
スエズ運河庁はエバーギブン号も同様の方法でポートスエズに移送することを望んでいる。
台湾に本拠を置くエバーグリーンマリン社は声明の中で、「エバーギブン号は紅海(ポートスエズ)から運河に入る際に強風にあおられたが、コンテナは沈んでいない」と述べた。
メディアと話すことを許可されていない匿名の当局者も、当日の天候は荒れていたと述べた。エジプト気象庁の予報官によると、23日午前のスエズ運河周辺の天候は「砂嵐」で、風の強さは15m/s(時速50km)ほどだったという。
地元メディアはエバーギブン号のシステムが何らかの理由で停止したと報じたが、バーンハード・シャルト・シップマネジメントは25日にこの報道を否定している。
今回のトラブルは、アフリカ大陸を大きく迂回するルートを回避するためにスエズ運河に依存している中東→欧州の石油と天然ガスの輸送に影響を与える可能性がある。25日の国際ベンチマークのブレント原油の価格は、前日から3ドルほど値上がりした。