南スーダン副大統領の裁判始まる、国家反逆罪
マシャール氏が公の場に姿を見せたのは今年3月に自宅軟禁下に置かれて以来初めてであった。
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南スーダンの首都ジュバで22日、国家反逆罪などの罪に問われているマシャール(Riek Machar)副大統領の裁判が始まった。
マシャール氏は共犯者らと共に出廷。キール(Salva Kiir)大統領を「大馬鹿者」と呼んだ。
マシャール氏が公の場に姿を見せたのは今年3月に自宅軟禁下に置かれて以来初めてであった。
一部の専門家はマシャール派とキール派の緊張がさらに高まり、再び内戦状態に陥る可能性があると警告している。
3月初旬、北東部で国軍とマシャール派の民兵が衝突。国軍はこの攻撃により撤退を余儀なくされた。
キール氏はこれに激怒し、マシャール派の閣僚を含む複数の幹部を逮捕。3月末にはマシャール氏も逮捕した。
マシャール氏を含む高官数人は現在、自宅軟禁下に置かれている。マシャール氏の支持者の中には弾圧を恐れ、国外に逃亡した者もいる。
キール氏は今月、刑事告発を理由にマチャール氏の副大統領職を停止した。
マシャール氏ら8人は国家反逆罪、人道に対する罪、殺人、共謀、テロリズム、公共財産及び軍事資産破壊の罪に問われている。
裁判の様子は国営テレビで生中継された。
マシャール派の弁護士は司法を「キール氏の奴隷」と呼び、裁判官を「無能」と一蹴した。
検察側はマシャール派が「国家テロ」を企てたと主張。マシャール氏を「テロリストリーダー」と呼んだ。
南スーダン内戦は2011年の独立直後に芽生えた政治的・民族的対立が背景にある。独立を主導したスーダン人民解放運動(SPLM)は、内部に複数の派閥を抱えていたが、2013年12月にキール氏(ディンカ族)とマシャール氏(ヌエル族)の権力闘争が表面化し、ジュバで武力衝突が発生した。これが全国的な内戦へと拡大し、民族間の報復の連鎖を招いた。戦闘は数十万人の死者と数百万人の国内避難民・難民を生み出し、国際社会は「世界最悪の人道危機の一つ」と呼んだ。
2015年に和平合意が結ばれたものの、実効性は乏しく、2016年には再び大規模戦闘が勃発した。国連PKO(UNMISS)や地域機構IGADが調停を試み、2018年に「再建合意」が成立し、2020年には統一政府が樹立された。しかし、この和平プロセスは脆弱であり、各派閥が実質的な軍事力を保持し続けている点が不安定要因として残っている。特に治安部隊の統合が遅々として進まず、政府軍と反政府勢力が依然として地域ごとに権力を分有する構図が続いている。
内戦の再燃リスクは複合的である。第一に、政治的権力分配をめぐる不信感が依然として根強く、統一政府の機能不全が目立つ。第二に、経済基盤が石油収入に極端に依存しており、価格変動や輸出インフラを握るスーダンとの関係悪化がすぐに国内不安に直結する。第三に、地方では武装民兵や部族間衝突が頻発し、国家が治安を掌握できていない。さらに、2023年以降のスーダン内戦は南スーダンにも波及しており、国境地帯の治安悪化や難民流入が新たな火種となっている。
国際社会の援助によって大規模な衝突は抑制されているが、和平プロセスの遅れと経済危機が重なることで再び全面戦争に発展する可能性は否定できない。南スーダンは独立から十余年を経てもなお国家形成の途上にあり、統一軍の創設、石油収入の透明な分配、民族融和の仕組みづくりが実現しなければ、内戦の再燃リスクは常に残り続ける。