南スーダン大統領、反逆罪で訴追、内戦再燃か、懸念高まる
南スーダンは独立後も権力闘争や民族間対立、武力衝突が繰り返され、国家統治や社会基盤の脆弱さが顕在化している。
とマシャール副大統領(AP通信)-1.jpg)
南スーダンのマシャール(Riek Machar)副大統領が反逆罪などの容疑で追起訴された。現地当局が11日、明らかにした。
一部の専門家はマシャール派とキール(Salva Kiir)大統領の派閥の緊張がさらに高まり、再び内戦状態に陥る可能性があると警告している。
現地メディアによると、キール氏を支持する勢力とマシャール氏を支持する民兵による小規模な戦闘は全国各地で続いている
キール氏はマシャール氏に近い政府高官を解任し、マシャール派を怒らせた。
3月初旬、北東部で国軍とマシャール派の民兵が衝突。国軍はこの攻撃により撤退を余儀なくされた。
キール氏はこれに激怒し、マシャール派の閣僚を含む複数の幹部を逮捕。3月末にはマシャール氏も逮捕した。
マシャール氏を含む高官数人は現在、自宅軟禁下に置かれている。マシャール氏の支持者の中には弾圧を恐れ、国外に逃亡した者もいる。
キール氏は11日、刑事告発を理由にマチャール氏の副大統領職務を停止すると発表した。
マシャール氏は2018年に締結された和平合意に基づき、同国ナンバー2の地位にある。
この合意は完全には履行されておらず、大統領選挙は繰り返し延期されてきた。
マシャール氏と他の7人は殺人、陰謀、テロリズム、公共財産及び軍事資産の破壊、人道に対する罪の容疑でも起訴されている。
南スーダンはアフリカ東部に位置する新興国家であり、2011年7月にスーダンから独立した。独立以前から北部スーダン政府との間で長期にわたる内戦(第二次スーダン内戦、1983~2005年)が続き、多大な人命と社会資源が失われてきた。独立により南スーダンは正式に国家として認められたが、その後も国内の民族間・政治勢力間の権力闘争が激化し、国家統治は安定を欠いた。
独立直後、南スーダンは主にディンカ族が支配する人民解放軍(SPLA)出身のキール氏を中心に政権が構築された。しかし、国内にはナイル川沿いの少数民族やヌエル族など、政治的に十分に代表されていない勢力が存在し、権力の独占と民族間の不満が蓄積した。こうした状況は、2013年12月にキール氏とマシャール氏の間で政権内対立が表面化する形で爆発した。この権力闘争は瞬く間に武力衝突へと発展し、事実上の内戦状態に至った。
この内戦では、当初は首都ジュバを中心に衝突が発生したが、国内各地の民族間抗争や武装勢力の分派により戦線は全国規模に拡大した。特にディンカ族とヌエル族の間での激しい武力衝突が繰り返され、多数の民間人が巻き込まれた。国連によると、数十万人が死亡し、約400万人が国内避難民または周辺国への難民となった。学校や病院の破壊、農地の荒廃により、生活基盤や食糧安全保障も崩壊した。
2015年、国際社会の圧力を受けてキール氏とマシャール氏は和平合意に調印したが、合意履行は遅延し、局地的衝突は継続した。2016年にはマシャール派が再び武力行動に出てジュバで激しい戦闘が発生し、和平合意は実質的に破綻状態に陥った。以降も断続的な戦闘が続き、武装勢力の分裂や民兵活動が国内の安全保障を不安定化させた。
2018年には再度の和平交渉により包括的和平合意(R-ARCSS)が成立し、主要指導者間で暫定政府を樹立することが決定された。これにより国家機構は形式的には統一されたが、実態としては権力分配や資源管理を巡る不満が根強く残った。石油収入の分配や軍の統合、地方政府の自治権などをめぐる争いは続き、地方レベルでの武力衝突や犯罪行為、略奪、民族間の報復が発生している。
社会インフラや公共サービスの整備も遅れており、治安維持の主体である軍や警察は部分的にしか機能していない。国際機関による人道支援が不可欠である一方で、援助物資の供給路も治安悪化の影響を受け、支援の実施は困難を伴う。加えて、長期的な紛争の影響で教育や医療、経済活動が停滞し、若年層の失業や貧困が深刻化している。
国内の権力闘争はまた、国際社会や隣国への影響も及ぼす。スーダン、ウガンダ、エチオピアなど周辺国は難民流入や武器流通の問題に直面し、地域全体の安定にも懸念が生じている。南スーダンの政治的脆弱性は地域的な安全保障や経済発展の阻害要因となっており、持続的な平和構築には国内外の包括的な取り組みが必要とされる。
南スーダンは独立後も権力闘争や民族間対立、武力衝突が繰り返され、国家統治や社会基盤の脆弱さが顕在化している。和平合意の締結や暫定政府の設置によって形式的な安定は模索されているものの、実質的には武装勢力の分裂や地方レベルでの騒乱が継続しており、人道危機や経済的停滞が深刻である。今後も国家建設の進展には国内政治の安定化、民族間和解、経済基盤の整備、国際社会の持続的支援が不可欠である。