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南アフリカ「口蹄疫」拡大、牛のワクチン接種プログラム始まる


口蹄疫は牛や豚など偶蹄類に感染しやすいウイルス性の家畜疾病で、感染力が極めて強く、国内の畜産業に甚大な打撃を与えている。
2026年2月27日/南アフリカ、クワズール・ナタール州の牧場(AP通信)

南アフリカ共和国は27日、急速に広がる口蹄疫(こうていえき)の感染拡大を食い止めるため、全国規模の大規模ワクチン接種プログラムを開始した。口蹄疫は牛や豚など偶蹄類に感染しやすいウイルス性の家畜疾病で、感染力が極めて強く、国内の畜産業に甚大な打撃を与えている。この感染拡大により、既に29万7000頭以上の牛が影響を受け、12万頭超が殺処分されている。これを受けて各国が南ア産肉の輸入禁止措置を講じ、同国の畜産・食肉産業は深刻な危機に直面している。

大統領府の報道官はX(旧ツイッター)への投稿で、ワクチン接種の開始を発表した。初期分としてトルコから約100万回分のワクチンが到着し、今後さらに追加分が到着する見込みだが、約1200万頭と推定される全国の牛に接種するには数が不足しているとの指摘がある。政府は緊急対策として国庫から約2500万ドルの資金を確保し、ワクチン調達を進めている。

スティーンハウセン(John Steenhuisen)農相は27日の声明で、「我々が最終的に採用した戦略は大規模ワクチン接種だ。口蹄疫を予防し、発生ごとに対応するのではなく、この病気を前もって封じ込める」と述べ、疫病抑止の決意を示した。

特に感染が深刻な地域として、沿岸部クワズール・ナタール州が挙げられている。同州では1万7000以上の牧場が感染の影響を受け、政府は同州を国家災害地域に指定した。この指定により、緊急予算の配分が可能となり、ワクチン購入などの対策に充てられる見込みだ。

すでに牧場主や肉牛生産者は感染拡大の影響を受け、感染が確認された牛舎の隔離措置や貿易停止に追われている。食肉企業であるカラン・ビーフ社は、「上流から下流まで、全てに甚大な損害が出ている」と述べ、感染拡大によるサプライチェーン全体への悪影響を強調した。牧場が牛を売却できず、屠殺も困難な状況となっており、消費者側にも価格高騰などの影響が及んでいるという。

農業界ではワクチン供給の遅れや不足を懸念する声が強い。国際的には中国やザンビアなどが南ア産肉の輸入を停止し、外貨獲得の柱である輸出収入が減少している。これに伴い、畜産業に関連する雇用の喪失や、国内の食肉供給の逼迫が予想される。スティーンハウセン氏は、今年中に全国の牛の80%以上のワクチン接種を目指す方針を示し、国全体での感染封じ込めを急いでいる。

一方、地方政府も対応を強化している。東ケープ州政府は州独自の緊急資金を確保し、ワクチンや関連医療資材の調達を進めるなど、地域レベルでの対策を強化していると表明している。

今回の口蹄疫対策は南アの畜産業のみならず国際的な食料安全保障や貿易にも影響を及ぼす可能性があり、政府と業界が連携して感染拡大の封じ込めに全力を挙げて取り組んでいる。感染の収束には時間を要する見込みで、今後のワクチン供給と接種体制の整備が喫緊の課題となっている。

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