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「水が押し寄せてきた」ケニア・リフトバレーで集落・ホテル・農場が水没

ナイバシャ湖周辺の集落では、かつて湖畔から約2キロ離れた場所にあった野菜農園や住宅が一夜にして浸水し、約5000人の住民が住居を追われた。
2025年11月11日/ケニア、リフトバレー郊外、大雨により冠水した集落(AP通信)

ケニア・リフトバレー地域で湖水位の上昇による洪水が深刻化している。東アフリカの中核をなすナイバシャ湖をはじめとする複数の湖では、例年を上回る雨量などを背景に水位が急激に上昇し、集落やホテル、農園が水没した。地元住民らは「水はどこから来たのか分からないほど突然だった」と語り、生活基盤を失いつつある現状を訴えている。

ナイバシャ湖周辺の集落では、かつて湖畔から約2キロ離れた場所にあった野菜農園や住宅が一夜にして浸水し、約5000人の住民が住居を追われた。ある農夫はAP通信の取材に対し、「長年乾いた土地として使ってきた農地が一転して湖の一部となり、家族と共に隣接する放棄校舎の一階に避難した」と語った。妻も「湖は以前遠くに見えていたのに、一晩で家の中まで水が入り込んだ」と述べた。

専門家はナイバシャ湖や他の湖で観測される水位上昇について、気候変動に伴う降雨パターンの変化や気温の上昇が要因の一つと指摘している。また、農業活動による堆積物の流入や地質的要素も影響しているとの見方があるという。これらの湖は排水口を持たず、降雨と蒸発のバランスによって水位が変動するため、連続する大雨が湖水位の急上昇を招いたと一部専門家は分析している。

洪水被害はナイバシャ湖にとどまらず、リフトバレー内の複数の湖でも同様の水位上昇が15年以上にわたって続いている。特にバリンゴ湖周辺では建物が完全に水没し、過去に観光資源として知られたホテルなどが湖底に没したままであると報告されている。

中央政府と地方自治体は被災者への緊急支援を進めており、移転支援や一時的な住宅支援などを提供している。ナクル郡の災害管理担当者は、現場での支援活動を「緊急対応」と位置づけ、特に支援が必要な世帯を優先的に支援する方針を示している。

一方で、被災者の多くは今後の生活に不安を抱えている。湖水位が継続的に上昇しているため、元の土地に戻る見通しは立っていない。中にはカバなど野生動物との衝突リスクが高まる地域もあり、避難生活の継続を余儀なくされている例もある。

ナイバシャ湖周辺は観光地としての側面も持ち、花卉(かき)栽培などの農業生産地としても重要な地域だ。これらの産業も浸水の影響を受け、地域経済への打撃が懸念されている。国際的な気候変動対策や地域のインフラ強化が求められているが、被災者は依然として困難な状況に置かれている。

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