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コンゴ東部で戦闘再燃、トランプ和平合意機能せず

コンゴのチセケディ大統領とルワンダのカガメ大統領は4日、米ホワイトハウスで会談し、トランプ大統領の立ち合いの下で和平協定に署名した。
2025年1月31日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマ、M23の戦闘員(Getty Images/AFP通信)

コンゴ民主共和国東部で政府軍と同国最大の反政府勢力「M23(3月23日運動)」との戦闘が再燃し、米国が仲介した和平合意を脅かしている。

コンゴのチセケディ(Félix Tshisekedi)大統領とルワンダのカガメ(Paul Kagame)大統領は4日、米ホワイトハウスで会談し、トランプ(Donald Trump)大統領の立ち合いの下で和平協定に署名した。

この合意は両国間の停戦および紛争終結をめざす広範な内容を含む。

しかし合意直後からコンゴ東部で砲撃や空爆が相次ぎ、合意の効果は“ほぼ皆無”との住民の声が相次いでいる。特に、ルワンダおよびブルンジとの国境に近い町では両首脳が和平協定に署名したと報じられた直後に空爆が行われたとされる。

住民たちは近隣の比較的安全とされる地域やルワンダ側に避難している。

一方、ルワンダ政府の支援を受けるM23は政府軍による空爆と砲撃が継続していると非難。政府軍はM23が民間施設を手当たり次第に爆撃していると主張している。

国際社会、とりわけ米国、アフリカ連合(AU)、そしてカタールなどが仲介にあたったこの和平構想は、現地での戦闘継続により、その信頼性は急速に揺らぎつつある。

コンゴ東部は鉱物資源が豊富な地域であり、莫大な資源を巡る地政学的利害も絡む。M23は今年初めに東部最大の都市ゴマやブカブを制圧し、人道危機の深刻化とともに、700万人以上が避難を余儀なくされてきた。

専門家は今回の合意が「画期的」であったとしても、根本的な対立構造や武装勢力の利害調整を伴わずに停戦だけを求めることは、長期的安定を保証するものではないと指摘していた。今回の戦闘再燃はまさにその指摘を裏付ける形となった。

こうした中、和平合意の実効性を確保するには、当事者間による明確な武装解除、責任の所在の明確化、そして国際監視体制の導入といった具体的な信頼醸成措置が不可欠だ。しかし現状では、戦闘の継続と住民の避難は止まっておらず、和平の道のりは遠い。

コンゴ東部では過去数十年にわたり紛争と資源争奪が繰り返され、多数の武装組織が乱立してきた。今回の合意にはそうした構造的な問題にどう対処するかを示す制度的かつ包括的枠組みの提示が期待されていたが、それが実現されないまま、武力行使が再開されたことで、国際的な和平の試みが再び頓挫するリスクが高まっている。

和平合意の「署名」という儀式だけでは、長年にわたる複雑な争いを収束させるには不十分であることが、改めて浮き彫りになった。今後、関係国・国際社会には根本原因に向き合う真摯な取り組みが求められている。

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