コンゴ政府と反政府勢力M23が和平協定の草案提示=報道

M23が主導する「コンゴ川同盟」は1月末に東部の最大都市である北キブ州ゴマを占領。その後、東部第2の都市・南キブ州ブカブに進軍、制圧した。
2022年11月7日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマ、軍の動員令に応じた若者たち(Moses Sawasawa/AP通信)

アフリカ中央部・コンゴ民主共和国政府と同国最大の反政府勢力M23(3月23日運動)が数カ月に及ぶ仲介の末、和平協定の草案を提示した。現地メディアが5日に報じた。

ロイター通信は和平交渉を仲介するカタール政府当局者の話しとして、「双方の交渉団は指導部と協議したうえで、交渉を再開する見込みである」と報じた。

M23が主導する「コンゴ川同盟」は1月末に東部の最大都市である北キブ州ゴマを占領。その後、東部第2の都市・南キブ州ブカブに進軍、制圧した。

それ以来、アフリカ諸国に加え、カタールと米国が和平に向けた協議を仲介してきた。

AP通信はコンゴ政府筋の話しを引用し、「一部の代表団メンバーが帰国し、政府と今後の交渉について協議している」と報じた。

ロイターによると、草案は最近起草されたわけでなく、1ヶ月以上更新されていないという。

M23に近い関係者はロイターの取材に対し、「政府が示した草案は明らかに政府寄りの内容で、受け入れがたい」と語った。

トランプ米政権のブーロス(Massad Boulos)上級顧問は先月初め、コンゴとルワンダが米国の仲介のもと、和平協定の草案を提出したと明らかにした。

ゴマには国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)の本部と南部アフリカ地域圏の基地があり、郊外の避難民キャンプでは数百万人がテント生活を送っている。

欧米諸国は隣国ルワンダによるM23への軍事支援を非難。一部の国は援助を停止した。

コンゴ川同盟は3月、支配下に置いた北キブ州の要衝ワリカレから部隊を撤退させると表明。国連はこの決定を歓迎し、撤退を機に停戦交渉を加速させるよう促した。

しかし、M23はその後、国軍とその支援民兵がワリカレに攻撃ドローンを送り込んできたと主張。撤退を取り消した。

ワリカレの人口約1万5000人。ゴマの北西約125キロに位置し、第4の都市キサンガニの400キロ圏内にある。

東部4州の主要道路がワリカレを通過する。国軍はこの町を失ったことで、東部4州の主要都市にアクセスしづらくなった。

双方は紆余曲折の末、互いに歩み寄る姿勢を見せ、M23はワリカレから部隊を撤退させたとみられる。

アフリカ諸国の調停努力が頓挫する中、カタールは3月、コンゴのチセケディ(Félix Tshisekedi)大統領とルワンダのカガメ(Paul Kagame)大統領を招き、その後、仲介国のアンゴラと共に「即時かつ無条件の停戦」を求める共同声明を出した。

政府とM23は4月、和平に向けて協議を継続することで合意したが、それ以降も東部の広い範囲で戦闘が続いている。

M23はルワンダとウガンダの支援を受けていたコンゴのツチ族武装集団の元戦闘員で構成され、2009年3月に締結された和平協定により、コンゴ軍に編入された。

しかし、M23の戦闘員はコンゴ軍に編入された後もルワンダ国境付近で活動を続け、13年の紛争に敗れるとルワンダやウガンダに逃亡。21年11月頃から活動を活発化させ、北キブ州の複数の集落を占領した。

コンゴ、米国、国連安保理はルワンダ政府がM23を支援していると指摘。ルワンダは長年、この主張を否定してきた。

1994年のルワンダ大虐殺に関与したとされるフツ族の住民数千人がコンゴ東部に逃げ込んで以来、両国の関係は緊張状態にある。

M23はコンゴに逃げ込んだフツ族の掃討を目指しているものとみられる。ルワンダはコンゴ政府が組織的に大虐殺の加害者であるフツ族を匿っていると主張している。

ルワンダ大虐殺の犠牲者は80万~100万人と推定されている。フツ族の過激派はツチ族だけでなく、フツ族の穏健派も殺害した。

国連はコンゴ国内で活動するルワンダ兵を最大4000人と推定している。

政府とM23による戦争は世界最大級の人道危機に発展。700万人以上が避難を余儀なくされている。

M23はブカブ近郊の空港も占拠した。

国際社会はこの紛争が1990年代から2000年代の第2次コンゴ戦争のような規模に発展することを恐れている。この戦争では500万~600万人が死亡したと推定されている。

SHARE: