◎エチオピアのアビィ・アハメド首相は隣国エリトリアと歴史的な和平協定を結んだことで高く評価され、2019年にノーベル平和賞を受賞した。
2019年12月10日/ノルウェー、オスロの市庁舎、ノーベル平和賞を受賞したエチオピアのアビィ・アハメド首相(Getty Images/AFP通信)

1月13日、ノルウェー・ノーベル委員会は2019年の平和賞受賞者であるエチオピアのアビィ・アハメド首相に、北部ティグライ地域で進行中の紛争と人道的危機を終結させるよう警告した。

同委員会が受賞者に警告を発するのは極めて稀。

委員会は声明の中で、「首相兼ノーベル平和賞受賞者のアビィ・アハメドは紛争を終わらせ、平和に貢献する特別な責任を負っている」と述べた。

アビィ首相は隣国エリトリアと歴史的な和平協定を結んだことで高く評価され、2019年にノーベル平和賞を受賞した。

委員会は、「アビィ・アハメドは彼の努力と歴史的な和平協定に基づき賞を授与された」と述べ、「和平協定は権威主義的な統治システムと広範な民族浄化を止めると期待されていた」と強調した。

しかし、エチオピアは2020年11月に内戦に突入した。

国軍とティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘に巻き込まれた市民は数百万人にのぼり、これまでに数万人が死亡、200万~300万人が国内避難民になり、数万人が隣国スーダンに逃亡したと推定されている。

TPLFとエリトリアは犬猿の仲であり、アビィ首相はエリトリア軍の入国を許可したうえで、TPLF掃討作戦を開始した。またエチオピア政府は昨年6月以来、ティグライ地域に対する国際社会の人道支援を阻止しており、数十万人が餓死の危機に瀕している。

ティグライ州で幼少期を過ごした世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は12日の会見で、「世界は地獄を目撃している」と語った。

ノルウェー・ノーベル委員会は声明の中で、「ティグライの人道的危機は極めて深刻であり、政府の取り締まりの影響で人道支援が枯渇している現状を受け入れることはできない」と述べた。

AP通信によると、首相官邸は問い合わせに応じなかったという。

エチオピア内戦は昨年末に新たな段階に突入し、TPLFはティグライ州を除く北部の占領地を放棄し、国軍はティグライ州には侵攻しないと発表した。

しかし、北部で活動する人道支援団体によると、国軍はティグライ州のTPLF施設に対するドローン空爆を継続しており、1月8日には避難民キャンプに身を寄せていた民間人50人以上が死亡、10日の空爆では少なくとも17人の死亡が確認された。

ニューヨーク・タイムズ紙は2020年に「疑わしい」ノーベル平和賞受賞者として、ミャンマーのアウンサンスーチー氏、イスラエルのシモン・ペレス元首相とイツハク・ラビン元首相、パレスチナ解放機構(PLO)のヤーセル・アラファト元議長、韓国の金大中 元大統領、米国のバラク・オバマ元大統領、そしてアビィ首相の名を挙げている。

イスラエルはパレスチナに対する弾圧、ミャンマーはロヒンギャ、米国は戦争、韓国は違法献金、PLOは和平に失敗した。

2021年5月8日/エチオピア、北部ティグライ地域の町アグラ(AP通信/ベン・カーティス)
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