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ナイジェリア軍がイスラム国戦闘員8人を殺害 待ち伏せ作戦

ISWAPはナイジェリア北東部を拠点とするイスラム過激派組織であり、イスラム国(ISIS)の地方支部の一つとして位置付けられている。
2024年6月30日/ナイジェリア、北東部ボルノ州、自爆テロが発生した結婚式場近くの通り(AP通信)

ナイジェリア軍が北東部ボルノ州でイスラム過激派を急襲し、イスラム国西アフリカ州(ISWAP)の戦闘員8人を殺害した。軍当局が16日、明らかにした。

それによると、部隊は15日未明、ボルノ州中心部の幹線道路沿いで「待ち伏せ攻撃」を決行。ISWAPの上級指揮官を含む8人を「粉砕」したという。

陸軍の報道官は声明で、「テロリストは幹線道路沿いで待ち伏せ攻撃を行うために現地に向かっていたが、治安部隊の先制攻撃を受け、バラバラになった」と述べた。

また報道官は「ISWAPの上級指揮官と中級指揮官2人を含む8人が死亡、一部の残党が逃走したため、部隊が追跡している」と述べた。

ISWAPはナイジェリア北東部を拠点とするイスラム過激派組織であり、イスラム国(ISIS)の地方支部の一つとして位置付けられている。もともとは2000年代から活動してきたボコ・ハラムの一派であったが、2015年にISISへ忠誠を誓い、組織内の指導部対立を経て分派したことで誕生した。以降、ボコ・ハラムの一部勢力がISWAPに移行し、より組織的かつ戦略的な活動を展開している。

ISWAPの活動地域はナイジェリア北東部のボルノ州を中心に、チャド湖周辺のチャド、ニジェール、カメルーンへと広がっている。この地域は国境が複雑に交錯しており、治安の空白地帯となりやすい地理的条件を抱えている。ISWAPはこの環境を利用し、軍事行動や越境攻撃を繰り返しながら勢力を維持してきた。

特徴として、ボコ・ハラムが無差別に民間人を標的にした残虐な攻撃を繰り返していたのに対し、ISWAPは戦術的に「住民の支持」を重視する傾向を持つ。具体的には、農村部や交易ルートを掌握し、徴税や物資供給を組織的に行うことで「影の統治」を実現している。その一方で、政府軍や国際部隊に対しては大規模な襲撃や待ち伏せ攻撃を行い、重火器や即席爆発装置を用いたゲリラ戦を展開するなど軍事能力も高い。

またISWAPは宣伝戦にも積極的であり、ISIS本部との連携を背景に映像や声明を発信し、国際的なジハード運動の一部であることを誇示している。これにより、域内外からの戦闘員勧誘や資金獲得を可能にし、他の地域組織との差別化を図っている。

国際社会は、アフリカ連合(AU)や地域多国籍部隊(MNJTF)を通じて対抗策を講じているが、貧困や失業、宗教対立、腐敗といった構造的問題が温床となり、完全な掃討には至っていない。ISWAPは地域住民の不満を巧みに利用し、弱体化しても再び勢力を盛り返すことが多い。

ISWAPは西アフリカにおける最も強力で持続的なイスラム過激派の一つであり、ナイジェリアのみならず周辺諸国の安全保障を長期にわたり脅かす存在である。

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