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モロッコで「合法大麻」栽培拡大、医療・産業用市場に本格参入

モロッコは世界最大級の大麻生産国であり、これまで主に非合法の形で樹脂(ハシシ)が欧州などに供給されていた。
大麻草(Getty Images)

モロッコ北部リフ山脈で長年にわたり非合法栽培が行われてきた大麻について、モロッコ政府は合法的な栽培と規制を拡大することで、世界的に拡大する医療・産業用大麻市場に本格的に参入しようとしている。合法化は2021年に特定用途で成立し、2022年から施行されているが、政府はさらなる成長戦略を描いている。

リフ山脈の大麻を栽培している70歳の農家はAP通信の取材に対し、「長年、当局から摘発される恐れと隣り合わせで大麻を栽培してきたが、現在は地元協同組合に合法的に販売している」と語った。

かつては危険と隣り合わせだった大麻の栽培、今は警察も摘発の対象とはみなしていない。

モロッコは世界最大級の大麻生産国であり、これまで主に非合法の形で樹脂(ハシシ)が欧州などに供給されていた。長年にわたり地元経済の基盤であった一方、反政府感情が強い地域でもあり、摘発や畑の焼却などの取り締まりも繰り返された。こうした歴史を背景に、政府は合法化を通じて農民の生活を安定させ、地域経済の復活を図ろうとしている。

合法化後、中央政府は栽培から販売までを厳格に規制している。種子や農薬使用、栽培許可、出荷まで細かな管理がなされ、娯楽目的の使用に関する大幅な規制緩和の兆しは見せていない。当局は規制と農家支援という「矛盾する二つの使命」を同時に果たす必要があると述べている。

2024年には国王モハメド6世(King Mohammed VI)が過去の大麻栽培で刑に服していた約4800人の農民を赦免し、合法化戦略への統合を促進した。既にリフ地域では3300人以上に栽培許可が発行され、約4200トンの合法大麻が生産された。

協同組合の取り組みも進展している。ある組合は約200人の小規模農家から大麻原料を集め、CBDオイルやローション、チョコレートなどに加工して国内薬局で販売している。原料から繊維用の工業用ヘンプを生産する例もあり、国内外の市場開拓が進んでいる。

合法化は農民や雇用を増やす新たな産業エコシステムを生み出しているものの、改革の限界も露呈している。合法市場は依然として非合法市場に比べ小規模であり、農家の収入や協同組合からの支払い遅延に対して不満が高まる場面もある。8月には協同組合が収穫物の支払いを怠ったことに抗議する農民らがデモを行った。

また政府データによると、合法栽培地は約5800ヘクタールにとどまる一方、非合法栽培地は約2万7000ヘクタールに達している。多くの農民が依然として非合法市場に依存していることから、改革は完全な転換点には至っていないとの指摘もある。国際的な調査機関の報告では、合法・非合法の両市場が並存する「共存型」の段階にあると分析されている。

政府はこの変革が始まったばかりであり、課題を克服するとしているが、リフ山脈の伝統的な大麻栽培を合法的経済へと移行させる試みは今後も続く見込みだ。

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