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「マネーブーケ」花に代わる愛の証、ジンバブエで人気

首都ハラレの市場では、花屋で働く男性が白いバラの茎に複数の50ドル紙幣を巻き付け、竹串で飾ったマネーブーケを丹念に組み立てている。
2026年2月10日/ジンバブエ、首都ハラレ、マネーブーケを持つ男性(AP通信)

アフリカ南部・ジンバブエでは2026年のバレンタインデーを前に、従来の花束に代わる新たな贈り物として「マネーブーケ(現金花束)」が急速に広がっている。これは米ドル紙幣を花のように折りたたんで飾ったもので、現金を直接贈る実用性と華やかさを兼ね備えたギフトとして人気を集め、伝統的な花束と肩を並べる存在になりつつある。

首都ハラレの市場では、花屋で働く男性が白いバラの茎に複数の50ドル紙幣を巻き付け、竹串で飾ったマネーブーケを丹念に組み立てている。紙幣は装飾用に円錐形に折られ、赤いラッピングとリボンで仕上げられる。この新しいギフトが「トレンド」になりつつあり、バレンタインデーが近づくにつれて注文が増加する見込みだと男性は語る。彼はこの市場で30年以上働いており、「マネーブーケが市場を活性化している」と述べている。

市場を訪れた23歳の男性はAP通信の取材に対し、「このトレンドを考えた人に称賛を送りたい。パートナーへの感謝を示す方法として最高だ」と語った。小さなマネーブーケの価格は25ドル前後から始まり、大きなものでは1000ドルを超えることもあるが、10本の赤いバラの束(35〜40ドル)よりも安い場合もある。

マネーブーケの人気は、ジンバブエの経済環境とも深く関係している。紙幣の流動性が高い同国では、現金そのものを贈ることが実用性や気遣いの象徴と見なされるためだ。専門家は「人々は花を愛しているが、紙幣が飾られていると愛情がより深く感じられ、気持ちがより意味深くなる」と語る。こうした実利的な魅力が、伝統的なバラの花束を上回る人気を生んでいる背景には、厳しい経済状況がある。

この傾向は特にZ世代を中心に広がっているが、年齢を問わず人気が高まっているようだ。あるフローリストは、「親たちの中には娘にマネーブーケを贈る人もいて、いわゆる“シュガーダディ”への誘惑に走らせないための実用的な贈り物として選ぶケースもある」と話す。

ジンバブエでは2009年のハイパーインフレにより通貨が放棄された後、米ドルが取引の主役となっている。自国通貨が復活した後も米ドルは法定通貨として幅広く使われ、使い勝手の良さから贈答文化にも影響を与えている。清潔で折り目のない紙幣は装飾用に人気だが、擦り切れた札は装飾には不向きなため、紙幣を新札に交換するサービスを手がける商売も生まれている。

この現象はジンバブエだけの話ではなく、アフリカの他の国々でも見られる。たとえばケニアでもマネーブーケが人気を集めているが、同国中央銀行は紙幣を折ったり接着したりする行為が現金処理に悪影響を与えるとして、罰則を設ける方針を示している。このため、オンライン上で賛否の議論が起きている。

一方ジンバブエでは、この「金銭と恋愛の融合」は禁止されておらず、現金の花束に加え、廃材から作ったハート形のアクセサリーやデコレーションといった持続可能な贈り物も人気を集めている。ハラレのギフトショップでは、廃棄された車のラジエーターやリムを溶かして作ったアルミ製のアクセサリーが並び、環境意識とロマンチックな象徴を同時に表現する試みとして注目を集めている。

こうした創意あふれるバレンタインギフトの流行は、ジンバブエの経済実態や社会の価値観が反映されたものであり、贈答文化の変化を象徴している。

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