マダガスカル大統領追放、軍が全権掌握、憲法停止
2009年のクーデターでラジョエリナ氏を支援した陸軍特殊部隊の司令官はアンタナナリボの記者団に対し、「我々が全権を掌握する」と宣言。デモ隊の歓声に応えた。
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アフリカ南東部沖の島国マダガスカルの議会下院(定数151)は14日、ラジョエリナ(Andry Rajoelina)大統領の弾劾決議案を圧倒的賛成多数で可決した。
陸軍特殊部隊の司令官らはその後、軍と治安部隊の将校で構成される評議会を立ち上げると宣言。新首相を任命し、迅速に文民政府を樹立すると表明した。
ラジョエリナ氏はこの数時間前、議会下院を解散すると発表したが、軍司令官と議会はこの大統領令を一蹴した。
ラジョエリナ氏は国外に逃亡したとみられる。
首都アンタナナリボで11日と12日に行われた抗議デモには陸軍の特殊部隊を含む多くの軍兵士が参加。ラジョエリナ氏に辞任を求めていた。
慢性的な停電・断水に抗議する若者主導のデモは9月25日に始まり、政府はアンタナナリボなど主要都市に夜間外出禁止令を発令している。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は一連の暴動と治安部隊による取り締まりで少なくとも22人が死亡したと報告しているが、政府はこの数字を否定している。
デモ隊は警察の取り締まりが強まるにつれ、政治家の汚職や縁故主義に抗議するようになった。
ラジョエリナ氏は先月末に全閣僚を解任し、デモ隊に対話を呼びかけたが、若者たちの怒りは収まらず、ラジョエリナ氏にも辞任を求めていた。
ラジョエリナ氏は12日の声明で、軍部隊によるクーデターが発生していると報告していた。
複数の野党議員がラジョエリナ氏を「反逆者」と呼び、「軍の支持を失い、国民を置いて逃げ出した」と非難した。
2009年のクーデターでラジョエリナ氏を支援した陸軍特殊部隊の司令官はアンタナナリボの記者団に対し、「我々が全権を掌握する」と宣言。デモ隊の歓声に応えた。
司令官は憲法と裁判所の権限が停止され、2年後に国民投票を実施する意向を表明したが、詳細は明かさなかった。
アンタナナリボではラジョエリナ氏の弾劾を祝う集会が開かれ、多くの軍人が参加した。
一方、大統領府は不信任決議案を憲法違反と非難したが、ラジョエリナ氏がどこにいるかは明らかにしなかった。
2009年のクーデターはアンタナナリボの市長であったラジョエリナ氏が主導。ラジョエリナ氏はラベロマナナ(Marc Ravalomanana)前大統領の独裁的な政治運営に反発し、首都で大規模な抗議運動を展開した。
抗議活動は次第に激化し、治安部隊との衝突も発生。軍の一部がラジョエリナ氏側に寝返ったことで、政権は弱体化した。ラベロマナナ氏は2009年3月に辞任し、権限を軍に委譲。軍はその後、ラジョエリナ氏を暫定大統領に任命した。
このクーデターは国際社会から非難を浴び、アフリカ連合やEU、国連などはマダガスカルの加盟資格停止や経済援助の凍結などの措置を取った。政情不安はその後も続き、民主秩序の回復には数年を要した。