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マダガスカル大統領が全閣僚を解任、数日間にわたる暴動受け

マダガスカルの電力・水道インフラは発展途上にあり、多くの課題を抱えている。
2025年9月25日/マダガスカル、首都アンタナナリボ、停電と断水に抗議するデモ(ロイター通信)

アフリカ南東部沖の島国マダガスカルのラジョエリナ(Andry Rajoelina)大統領は29日、停電と断水に抗議するデモが暴動に発展し、治安部隊の取り締まりによって死傷者が出たことを受け、全閣僚を解任した。

ラジョエリナ氏は国営テレビで演説。首相を含む閣僚たちは新政権が発足するまで暫定的に留任すると表明し、要職への応募を呼びかけた。

慢性的な停電・断水に抗議する若者主導のデモは25日に始まり、政府は首都アンタナナリボなど主要都市に夜間外出禁止令を発令した。

抗議者らはラジョエリナ氏に辞任と議会の解散を要求していた。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のターク(Volker Turk)高等弁務官は29日早朝、一連の暴動と治安部隊による取り締まりで少なくとも22人が死亡したと発表した。

ターク氏は声明で、治安部隊の「暴力的な対応」を非難した。

地元当局は暴動による死傷者数を発表していない。政府は25日からアンタナナリボに、26日から他の主要都市に夜間外出禁止令を課している。

マダガスカルの電力・水道インフラは発展途上にあり、多くの課題を抱えている。特に農村部ではインフラ整備が遅れており、都市部と地方で大きな格差が存在する。

電力インフラについて見ると、全国的な電化率は約30%程度にとどまり、農村部に限れば10%以下という統計もある。主な電力供給源は水力発電とディーゼル発電であるが、老朽化した設備や管理体制の不備により、電力供給は不安定である。アンタナナリボを含む都市部でも停電は頻繁に発生し、経済活動や生活に大きな影響を与えている。また、国営電力会社JIRAMAは慢性的な財政赤字を抱えており、電力料金の高騰やサービスの質の低下が問題となっている。

一方、水道インフラも深刻な状況にある。都市部では一応の給水サービスが存在するものの、配管の老朽化や水源の汚染により、安全な飲料水の確保が困難な地域が多い。農村部では井戸や河川から水を汲むのが一般的であり、衛生状態は劣悪である。下水道インフラはほとんど整備されておらず、家庭や工場の排水が無処理のまま自然環境に流されるケースも多い。このような状況は水系感染症の拡大を招き、健康面でも深刻な影響を及ぼしている。

国際機関やNGOの支援を受けて、再生可能エネルギーの導入や地方の井戸整備などが進められてはいるが、政府の予算不足や制度的課題により、持続的な改善には至っていない。今後、マダガスカルの持続可能な発展を図るためには、電力・水道といった基礎インフラの強化が急務である。

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