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マダガスカル大統領、閣僚候補者に「ポリグラフ検査」命じる


ポリグラフは心拍数や発汗などの生理反応をもとに判定を行うが、心理的緊張や環境要因によって結果が左右される可能性がある。
2025年10月14日/マダガスカル、首都アンタナナリボ、クーデターを主導した陸軍のランドリアニリナ大佐(AP通信)

インド洋の島国マダガスカルで、閣僚候補者に対し「ウソ発見器」検査を義務付ける異例の方針が打ち出され、国内外で議論を呼んでいる。汚職対策を前面に掲げる軍事政権が人事に科学的手法を導入する姿勢を示した形だ。

この方針を主導するのは軍政を率いるランドリアニリナ(Michael Randrianirina)大統領である。同氏は19日、全ての閣僚候補者に対して、ポリグラフ検査を実施すると表明した。検査では過去の不正行為や汚職関与の有無などが問われ、結果に基づいて候補者を選別するという。検査に合格した者のみが次の面接段階に進む仕組みで、最終的な任命は同氏とラジャオナリソン(Mamitiana Rajaonarison)首相が行う。

ランドリアニリナ氏は声明で、「国家に忠実で誠実な人物を見極める必要がある」と強調し、完全な潔白さではなく「一定程度クリーンであること」が重要だと説明した。その発言は、現実的な基準を示したものとも受け取られる一方で、腐敗の根深さを逆に浮き彫りにしたともいえる。

背景には同国が長年抱えてきた政治不信と深刻な貧困問題がある。人口の多くが困難な生活を強いられる中、政府の腐敗や行政の非効率性に対する不満が高まり、若者を中心に抗議運動が拡大した。こうした情勢の中で、ランドリアニリナ氏は昨年のクーデターで政権を掌握し、政治体制の刷新を掲げてきた。

政権発足後、既存の閣僚はすべて解任された。そのうえで新たな体制づくりが進められ、今回のポリグラフ検査は新内閣人事の中核的な選考手段と位置付けられている。ランドリアニリナ氏は腐敗の排除を最優先課題とし、信頼できる人材の登用によって国家再建を進める考えを示している。

しかし、ウソ発見器の信頼性については国際的にも議論が分かれている。ポリグラフは心拍数や発汗などの生理反応をもとに判定を行うが、心理的緊張や環境要因によって結果が左右される可能性がある。そのため、科学的に完全な真偽判定が可能とは言えず、司法の場でも証拠能力が限定的とされる国が多い。

このため、閣僚選考に導入することについては、透明性向上の試みと評価する声がある一方で、政治的パフォーマンスに過ぎないとの批判も出ている。また、検査結果をどのように解釈し、最終判断にどの程度反映させるのかといった運用面の課題も指摘されている。

それでもランドリアニリナ氏は「腐敗の一掃なくして国家の再建はあり得ない」との立場を崩していない。今後2年以内に民主的な選挙を実施する方針も示しており、それまでの暫定統治の正当性を確保する狙いもあるとみられる。

異例の制度を伴う今回の人事改革は国民の信頼回復につながるのか、それとも新たな混乱を招くのか。マダガスカルの政治の行方は、引き続き国際社会の注目を集めている。

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