コンゴ反政府勢力M23が民間人86人殺害、和平協定に暗雲

事件は同州の2つの集落で7月24日と8月4日に発生。M23とルワンダ軍の兵士が集落に押し入り、住民少なくとも86人を殺害した。
2021年5月27日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマの幹線道路(AP通信/Moses Sawasawa)

アフリカ中央部・コンゴ民主共和国当局は9日、隣国ルワンダの支援を受ける反政府勢力M23(3月23日運動)が東部・南キブ州で民間人少なくとも86人を殺害したと明らかにした。

それによると、事件は同州の2つの集落で7月24日と8月4日に発生。M23とルワンダ軍の兵士が集落に押し入り、住民少なくとも86人を殺害したという。

軍当局は声明で、「この虐殺と、M23による未成年者の徴兵を最も厳しい言葉で非難する」と述べた。

M23とルワンダ政府はコメントを出していない。

コンゴとルワンダは先月末、合同監視委員会の第1回会合を米ワシントンDCで開催した。

両国は6月末、トランプ米政権の仲介で和平協定に調印した。

ルワンダ軍はこの協定に基づき、90日以内にコンゴ東部から撤退する必要がある。

トランプ政権はコンゴ東部の紛争を終わらせ、この地域の希少な鉱物資源(タンタル、金、コバルト、銅、リチウムなど)に関する協定を結び、欧米諸国の投資を呼び込みたいと考えている。

コンゴ政府は東部紛争への対応に苦慮しており、鉱物資源と引き換えに、米国に安全保障を提供するよう求めてきた。

最新の暴力はカタール主導のコンゴとM23による和平協定に影響を与える可能性がある。

コンゴ政府とM23は7月19日、カタール・ドーハで数十年に渡る紛争を終結させるための原則宣言に署名した。

この宣言には恒久的な停戦と和平協定締結に向けたコミットメントが盛り込まれている。

和平協定は8月18日までに締結される予定。合意の条件には「民間人の保護」と、紛争で避難を余儀なくされた市民数百万人の安全な帰還が含まれている。

地元メディアによると、政府とM23が原則宣言に署名した後も東部の広い範囲で戦闘が続いているという。

コンゴ東部では国際テロ組織アルカイダやイスラム国(ISIS)とつながりのある過激派など、120以上の武装勢力が活動。そのほとんどが土地や貴重な鉱物などを守るために戦っている。

政府とM23の和平が実現すれば、鉱物資源が豊富な東部地域に数十億ドルの西側投資を呼び込む可能性がある。

M23が主導する「コンゴ川同盟」は1月末に東部の最大都市である北キブ州ゴマを占領。その後、東部第2の都市・南キブ州ブカブに進軍、制圧した。

それ以来、アフリカ諸国に加え、カタールと米国が和平に向けた協議を仲介してきた。

コンゴはルワンダ政府がM23を支援していると非難している。国連によると、ルワンダ軍の兵士約4000人がコンゴ東部に駐留し、M23を支援しているという。

コンゴ川同盟の指導者であるコルネイユ・ナンガア(Corneille Nangaa)氏は4月、APのインタビューで、「米国が求めている鉱物協定は何の役にも立たず、政府が米国とどのような協定を結ぼうと、戦いを止めない」と語った。

コンゴ川同盟は3月、支配下に置いた北キブ州の要衝ワリカレから部隊を撤退させると表明。国連はこの決定を歓迎し、撤退を機に停戦交渉を加速させるよう促した。

しかし、M23はその後、国軍とその支援民兵がワリカレに攻撃ドローンを送り込んできたと主張。撤退を取り消した。

ワリカレの人口約1万5000人。ゴマの北西約125キロに位置し、第4の都市キサンガニの400キロ圏内にある。

東部4州の主要道路がワリカレを通過する。国軍はこの町を失ったことで、東部4州の主要都市にアクセスしづらくなった。

双方は紆余曲折の末、互いに歩み寄る姿勢を見せ、M23はワリカレから部隊を撤退させたとみられる。

アフリカ諸国の調停努力が頓挫する中、カタールは3月、コンゴのチセケディ(Félix Tshisekedi)大統領とルワンダのカガメ(Paul Kagame)大統領を招き、その後、仲介国のアンゴラと共に「即時かつ無条件の停戦」を求める共同声明を出した。

政府とM23は4月、和平に向けて協議を継続することで合意したが、それ以降も東部の広い範囲で戦闘が続いている。

M23はルワンダとウガンダの支援を受けていたコンゴのツチ族武装集団の元戦闘員で構成され、2009年3月に締結された和平協定により、コンゴ軍に編入された。

しかし、M23の戦闘員はコンゴ軍に編入された後もルワンダ国境付近で活動を続け、13年の紛争に敗れるとルワンダやウガンダに逃亡。21年11月頃から活動を活発化させ、北キブ州の複数の集落を占領した。

コンゴ、米国、国連安保理はルワンダ政府がM23を支援していると指摘。ルワンダは長年、この主張を否定してきた。

1994年のルワンダ大虐殺に関与したとされるフツ族の住民数千人がコンゴ東部に逃げ込んで以来、両国の関係は緊張状態にある。

M23はコンゴに逃げ込んだフツ族の掃討を目指しているものとみられる。ルワンダはコンゴ政府が組織的に大虐殺の加害者であるフツ族を匿っていると主張している。

ルワンダ大虐殺の犠牲者は80万~100万人と推定されている。フツ族の過激派はツチ族だけでなく、フツ族の穏健派も殺害した。

国連はコンゴ国内で活動するルワンダ兵を最大4000人と推定している。

政府とM23による戦争は世界最大級の人道危機に発展。700万人以上が避難を余儀なくされている。

国際社会はこの紛争が1990年代から2000年代の第2次コンゴ戦争のような規模に発展することを恐れている。この戦争では500万~600万人が死亡したと推定されている。

米国はルワンダに対し、コンゴから部隊を完全撤退させることを求めている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は6日、M23が過去1カ月間で少なくとも319人を殺害したと明らかにしていた。

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