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リビア当局、漂流中のロシアタンカーを曳航、環境災害阻止


このタンカー「アークティック・メタガス(Arctic Metagaz)」は液化天然ガス(LNG)を積載し、約3週間にわたり無人のまま地中海を漂流していた。
2025年10月17日/ウクライナ軍の水上ドローン(AP通信)

アフリカ北部・リビアの沿岸警備当局は24日、地中海を漂流していたロシアのタンカーを曳航し、環境汚染の回避に向けた対応を進めている。問題の船舶は対ロシア制裁を回避するために運用されるいわゆる「影の船団(シャドーフリート)」の一隻で、国際社会の懸念が高まっていた。

このタンカー「アークティック・メタガス(Arctic Metagaz)」は液化天然ガス(LNG)を積載し、約3週間にわたり無人のまま地中海を漂流していた。リビア沿岸警備隊によると、同船は西部ズワラ沖の安全な海域へと曳航されている。

同船は3月上旬、マルタ沖で発生したとみられる海上ドローン攻撃により大きな損傷を受けた。船体には火災の痕跡が残り、傾いた状態で漂流を続けていたという。ロシア側はウクライナによる攻撃と主張しているが、ウクライナは公式なコメントを出していない。

乗組員約30人は救助され、人的被害は報告されていないが、問題は積載されていた大量の燃料である。LNGに加え、ディーゼル油など数百トン規模の燃料を搭載していたとみられ、流出すれば地中海の海洋環境に深刻な影響を及ぼす恐れが指摘されていた。

リビア国営石油公社(NOC)はイタリアのエネルギー企業エニと連携し、曳航作業や安全確保に当たっている。声明では「環境リスクの低減と漏出防止のため、あらゆる措置を講じている」としており、汚染の未然防止を最優先に対応していると強調した。

このタンカーは、ロシアがウクライナ侵攻後に科された制裁を回避するために運用している「影の船団」に属する。こうした船舶は登録や運航実態を不透明にすることで制裁逃れを図るが、安全基準や監督が不十分な場合も多く、今回のような事故リスクが国際問題となっている。

欧州各国も事態を重く見ており、イタリアやスペインなどはEUに対し、緊急対応の必要性を訴えていた。漂流中のタンカーは爆発や座礁の危険性も指摘され、「環境災害の時限爆弾」とも表現される状況にあった。

今回の曳航措置により、当面の危機は回避されたとみられるが、老朽化した船舶や制裁逃れの運航実態がもたらすリスクは依然として残る。地中海という閉鎖性の高い海域において、ひとたび大規模な燃料流出が発生すれば、生態系や沿岸経済への影響は長期化する恐れがある。国際社会には海上安全と環境保護の観点から、こうした「影の船団」への監視と規制強化が求められている。

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