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リビア政府、漂流中のロシアタンカーに対応、環境災害阻止へ


同タンカーは北極圏のムルマンスク港でLNGを積載・出航したとされるが、3月初めに地中海で何らかの事故後、乗組員が乗船していない状態で漂流している。
2026年3月13日/地中海のマルタ沖、漂流中のロシア船籍LNGタンカー(ロイター通信)

アフリカ北部・リビアの国営石油公社(National Oil Corporation, NOC)は21日、重大な損傷を受けて無人で地中海を漂流しているロシア船籍の液化天然ガス(LNG)タンカーに対処するため、専門の企業と契約を結んだと発表した。このタンカーはロシア船籍の大型タンカー「アークティック・メタガス(Arctic Metagaz)」で、現在リビア沿岸に向かって移動している。この漂流船の処理をめぐって、環境面での懸念と国際的な対応が焦点となっている。

同タンカーは北極圏のムルマンスク港でLNGを積載・出航したとされるが、3月初めに地中海で何らかの事故後、乗組員が乗船していない状態で漂流している。リビア国営石油公社の声明によると、今後この船をリビアの港まで曳航し、適切な処理を行う予定だという。声明は同社がリスクを「制御可能」と評価していることも明らかにしている。

この問題は安全保障と環境保護の両面で国際的な懸念を引き起こしている。イタリア、フランス、スペインを含む南欧の複数国は今週、EUの執行機関である欧州委員会に対し、このタンカーが「重大な環境災害」をもたらす可能性があるとの警告文書を送付していた。これらの国々は大量のガスや燃料が海に放出されるリスクを懸念している。

同タンカーには重油約450トン、ディーゼル燃料約250トンとLNGが搭載されているとみられ、LNGの正確な量は不確かだが、部分的に再気化して散逸している可能性があるという見方もある。このため、タンカーが沿岸に接近する前に適切な対策が求められている。

報道によると、このタンカーはロシアのいわゆる「影の船団」に属する可能性が指摘されている。影の船団とは、ウクライナ侵攻後のEUによる制裁を逃れるため、旧式船舶や制裁対象の船舶を利用して石油・ガスを輸送する船隊を意味しており、保険や安全基準を欠いた危険な運航が懸念されている。

リビア政府は今回の漂流船問題に対応するため、緊急対策室を設置し、国内外の関係機関との連絡と行動の調整を進めている。メリタ・オイル・アンド・ガス(Mellitah Oil and Gas)とイタリアのエネルギー企業エニ(Eni)とも協力し、曳航作業や危険物処理の準備を進めている。NOCは声明で、リビア国内の石油関連施設への汚染リスクは現時点ではないとしている。

欧州各国も引き続きEUレベルでの協調対応を求めており、環境保護団体や沿岸国は漂流船の制御に向けた迅速な措置を取るよう要請している。また、この種の無人で漂流する危険物搭載船に対する法的責任や国際的な対応枠組みのあり方についても議論が拡大しつつある。

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