ケニアでアフリカゾウによる襲撃相次ぐ、4人死亡、抗議デモに発展
事件はケニア南部カジアド郡で相次いで発生した。住民らによると、複数のゾウが集落やその周辺を徘徊し、作物や放牧中の家畜に被害を及ぼすだけでなく、村人を襲う例が増えていたという。
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ケニアでは野生のゾウが住民を襲い、1週間で4人が死亡したことを受けて抗議デモが行われている。この事態は人間と野生動物との衝突が深刻化していることを象徴する出来事となっている。
事件はケニア南部カジアド郡で相次いで発生した。住民らによると、複数のゾウが集落やその周辺を徘徊し、作物や放牧中の家畜に被害を及ぼすだけでなく、村人を襲う例が増えていたという。
専門家はゾウの行動を植生の不足や資源争奪の激化によるものと分析している。ケニアではこのところ短雨期にもかかわらず雨量が平年を下回っており、食糧となる植物が不足しているとの指摘がある。
当局によると、ゾウによる死亡事故のうち少なくとも2人を殺害したと見られるゾウがカジアド郡で射殺された。当局がゾウの死骸を調べ、当該個体が槍や矢による傷を負っていたことを確認したと発表している。これは過去に人間との衝突があり、傷を受けた可能性を示すものであるという。
最も最近の犠牲者はヤギを放牧していた男性で、ゾウに襲われて命を落としたと地元当局は報告している。住民らの間ではゾウの出没や被害に対する不安が高まり、一部で抗議が起こり、政府に対策の強化を求める声が強まっている。
これを受けて中央政府は声明を発表し、冷静と節度ある対応を呼びかけるとともに、予防策の強化や早期対応能力の向上によって同様の事故を減らす方針を示した。声明では、ゾウと人間の衝突を未然に防ぐための取り組みを強化する必要があるとし、地域社会との協力による解決策の模索を進める考えを示している。
政府はこれまでにも、野生動物によって負傷したり死亡したりした住民に対し、補償金を支払う制度を運用してきた。この制度により、過去に数千人規模の人々が補償を受けているという。だが、住民の間では補償制度だけでは根本的な対策にならないとの不満が根強い。食料不足や生息地の変化に伴い、人間と野生動物との境界が曖昧になる状況が続いていることが、今回の連続被害と抗議を引き起こした背景にあるとみられている。
専門家は、気候変動や土地利用の変化がアフリカ各地で野生動物との接触機会を増やしていると指摘しており、単なる局所的な事件ではなく、長期的な対策が求められる人間と野生生物の共存問題として議論が進むことが予想される。
