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イスラエル、ソマリランドを独立国家として正式に承認、国連加盟国初

国連加盟国がソマリランドを国家承認したのはこれが初めてであり、約34年に及ぶソマリランドの独立承認を巡る長年の議論に新たな展開をもたらすことになる。
ソマリランドの国旗を持つ男性(Getty Images)

イスラエルは12月26日、アフリカ北東部のソマリランド共和国を独立主権国家として正式に承認したと発表した。国連加盟国がソマリランドを国家承認したのはこれが初めてであり、約34年に及ぶソマリランドの独立承認を巡る長年の議論に新たな展開をもたらすことになる。

イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は声明で、ソマリランドとの外交関係を「アブラハム合意の精神」に基づいて構築すると述べた。

またネタニヤフ氏はソマリランドのアブドゥラヒ(Abdirahman Mohamed Abdullahi)大統領を称賛し、農業・保健・技術・経済など複数分野での協力を進める意向を示したほか、公式訪問の招待を受けたと明らかにした。

イスラエルの外相と大統領も承認の宣言文に署名し、両国の大使交換や大使館設置を含む完全な外交関係樹立を約束した。

ソマリランドは1991年、ソマリア内戦を受けて独立を宣言し、自治政府を維持し続けてきた。中心都市ハルゲイサを中心に安定した治安と比較的平和な行政運営を保ってきたものの、国際社会における国家承認をほとんど得られていなかった。今回のイスラエルによる承認はソマリランドにとって初の正式な国際的承認であり、同政府はこれを国際的な正統性獲得への重要な一歩と位置付けている。

イスラエルの発表に対しては、地域の主要国から批判の声が上がっている。エジプト外相はソマリア、トルコ、ジブチの外相と連絡を取り合い、イスラエルの決定がアフリカ東部地域の安定とソマリアの主権に悪影響を与えると警告したとしている。また、これらの国々はソマリランド承認に反対し、ソマリアの統一と領土保全への支持を改めて表明した。

ソマリランド側は声明で、イスラエルの承認を踏まえて他国も続く可能性があるとの期待を示した。承認により、国際的な市場へのアクセスや外交的影響力の拡大が見込まれるとし、アフリカや中東での安定や繁栄に向けた新たなパートナーシップ構築への意欲を強調した。

一方で、ソマリア政府は長年にわたりソマリランドを自国の領土と見なしており、いかなる国の承認にも反対してきた。今回の動きがソマリアとの関係悪化や地域情勢の緊張を高める可能性が指摘されている。また、国際社会の多くの国は依然としてソマリランドの独立を認めておらず、今後の承認動向が注目される。

専門家は、イスラエルによる承認が地政学的な戦略とも関連していると分析している。ソマリランドは紅海とアデン湾に面した要衝に位置し、海上交通や安全保障上の重要性が高い。このため、イスラエルは同地域との関係深化を通じて、自国の戦略的利益や平和・安定への寄与を模索しているとの見方が出ている。

今回の承認は単なる外交的措置を超え、アフリカ東部と中東をめぐる国際政治の勢力図に影響を与える可能性をはらんでいる。ソマリランドの今後の動向と各国の対応が注目される中、国際社会は新たな外交課題に直面している。

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