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ギニア軍司令官、クーデター首謀者から大統領への道のり完結へ

ドゥンブヤ氏は軍特殊部隊出身で、2021年9月に当時のコンデ大統領を追放、政権を掌握した。
2025年11月3日/ギニア、首都コナクリ、大統領選に立候補したドゥンブヤ大佐の支持者(ロイター通信)

ギニアの軍事政権を率いる陸軍特殊部隊の司令官ドゥンブヤ(Mamady Doumbouya)大佐は2021年のクーデターで権力を掌握して以来の政治的旅路の集大成として、12月28日実施予定の大統領選挙で正式に大統領に就任する予定だ。かつては選挙への出馬を否定していたにもかかわらず、憲法改正を経て出馬が可能になり、候補者として選挙戦に臨んでいる。

ドゥンブヤ氏は軍特殊部隊出身で、2021年9月に当時のコンデ(Alpha Conde)大統領を追放、政権を掌握した。新体制下ではギニアの主要産業である鉱物セクター改革に取り組み、世界最大級の埋蔵量を誇るボーキサイトと豊富な鉄鉱石資源を持つシマンドウ(Simandou)で大規模な開発プロジェクトを推進した。これらの経済政策を成果として掲げ、貧困と汚職撲滅を訴えることで支持を固めている。

当初、ドゥンブヤ氏は軍政下の暫定憲章により選挙への出馬を禁止されていたが、今年9月の国民投票で新憲法が承認され、軍関係者の立候補制限が撤廃されたことで出馬が可能になった。 これによって自身の「民主的な正当性」を求める機会が開かれた形だ。

しかし、選挙の公正性を巡る懸念は根強い。主要な野党指導者の一部が国外に追放されたり、訴追されているほか、反政府デモや報道への規制が強まったとの批判もある。実際、強力な対抗馬と目される複数の野党候補はいるものの、選挙戦の舞台では不利な立場に置かれているとの指摘がある。こうした背景から、ドゥンブヤ氏が選挙を通じて事実上の権力を正当化しようとしているとの見方が広がっている。

ギニアは近隣のサヘル地域諸国と比べて比較的安定した状態を保っているものの、民主主義の後退や権力集中への懸念が国際的にも指摘されている。欧米諸国はドゥンブヤ政権を批判する一方で、過度の圧力がギニアを中国やロシアなど他の大国に接近させるリスクもあるとの複雑な外交判断を迫られている。軍出身の指導者が選挙を経て正式な大統領に就くと、西アフリカ全体に影響を与える可能性があり、今後の地域政治の動向にも注目が集まっている。

同国の鉄鉱山開発プロジェクトは進展しつつあるが、現地労働者の大量解雇を巡る社会的な不満や経済効果の波及に関する課題も浮上しており、政治動向と並んで国内の安定維持が改めて問われている。

ドゥンブヤ氏の政治的な歩みは「クーデター指導者から正統性を求める大統領候補へ」という転換点にあり、選挙結果がギニアの将来に大きな影響を与えるとみられている。

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