ガーナ中央銀行が3.0%利下げ、経済見通し改善 25年9月
25年8月のインフレ率は前年同月比11.5%増、8カ月連続で前月を下回り、21年10月以来の低水準となった。
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アフリカ西部・ガーナの中央銀行は17日、持続的なインフレ率の低下とマクロ経済見通しの改善を理由に、政策金利を3.5ポイント引き下げ、21.5%に設定した。
ロイター通信のアナリストは2.0ポイントの利下げと予想していた。
アシアマ(Johnson Asiama)総裁は記者会見で、「過去数カ月間でガーナのマクロ経済見通しが改善し、経済が力強い成長を示している」と語った。
またアシアマ氏は「マクロ経済状況の現状を考慮すると、委員会の見解は、インフレは短期的に緩和し続けるという結論に至った」と述べた。
25年8月のインフレ率は前年同月比11.5%増、8カ月連続で前月を下回り、21年10月以来の低水準となった。7月は12.1%であった。
一方、25年第2四半期(4~6月)の経済成長率は前年同期比6.3%増、サービス業が特に堅調であった。
ガーナは独立以降、クーデターや軍政の時代を経て、1990年代以降は選挙を通じた政権交代が定着し、地域の中では「模範的民主国家」と見なされてきた。この政治的安定は、外国からの直接投資や国際機関との協調を可能にし、資源開発やインフラ整備を進める条件を整えてきた。
ガーナ経済の中心は依然として一次産品の輸出に依存している。特にカカオ、金、そして近年急速に拡大した石油が主要な外貨獲得手段となっている。カカオは世界有数の生産国として、輸出収入と雇用の両面で重要な役割を果たしている。金に関しても、南アフリカやマリなどと並ぶアフリカの主要生産国であり、国際価格の変動に強く左右される体質を持つ。さらに2010年以降、沖合での石油生産が本格化し、エネルギー輸出国としての地位を確立しつつある。石油収入は一時的に経済成長を押し上げたが、その後の価格下落によって財政収支が悪化し、オイルブームの恩恵を持続的に享受するには至らなかった。
ガーナ経済は2010年代前半に高い成長率を記録したが、その後は減速し、特に新型コロナウイルスの世界的流行以降は財政悪化と通貨安が深刻化した。政府は巨額の債務を抱え、国際通貨基金(IMF)との協議を余儀なくされた。2022年にはデフォルトに近い状況に陥り、IMFからの支援プログラムに合意した。これに伴い、財政健全化や歳入改革、補助金削減などが求められており、国民生活には厳しい影響が及んでいる。インフレ率は一時50%を超える水準に達し、特に輸入品価格の高騰が庶民の生活を直撃した。通貨セディの下落も進み、購買力の低下と社会不安を招いている。
一方で、ガーナには成長の潜在力も存在する。人口は約3300万人と西アフリカでは中規模で、都市化が進み、若年層が多い。これにより、労働力供給や内需拡大の基盤が形成されつつある。農業分野ではカカオに依存する体質からの脱却を目指し、カシューナッツや野菜、果物などの多角化を進めている。また、サービス産業、特に情報通信技術分野の発展が期待されており、首都アクラは西アフリカにおけるIT拠点の一つとして注目されている。金融サービスやスタートアップ企業も増加しており、外資系企業の関心も高い。
エネルギー面では、石油に加えて天然ガスや再生可能エネルギーの開発が進められている。特に太陽光発電は電力供給不足を補う手段として注目されている。ただし、電力インフラの不安定さや送電網の脆弱性は依然として課題であり、工業発展の制約となっている。製造業については、工業団地の整備や外国直接投資の誘致を進めているものの、基盤はまだ弱い。輸入依存度が高いため、為替の変動が産業全体に大きな影響を与える。
ガーナの経済課題を整理すると、第一に「資源依存からの脱却」が挙げられる。金や石油、カカオの国際価格に左右される経済構造は脆弱であり、持続的な成長を確保するには製造業やサービス産業の育成が不可欠である。第二に「債務管理と財政健全化」が必要である。高金利国債への依存や外貨建て債務の膨張は、国際金融市場の動揺に直結するリスクを伴う。IMFプログラムを通じて財政赤字削減や税制改革を実施する一方、国民への負担増が政治的不安定につながる恐れもある。第三に「社会的不平等の是正」が課題となっている。都市部と農村部の格差、若年失業率の高さ、教育や医療へのアクセス不足などが、社会の持続可能性を脅かしている。
ガーナの経済は大きな可能性と深刻な脆弱性を併せ持っている。政治的安定と豊富な資源、若い人口は成長の強みであるが、一方で外部要因に左右されやすい輸出依存、財政赤字、インフレ、通貨安といった構造的問題が足かせとなっている。今後は、資源収入を持続可能な投資に転換し、製造業やサービス産業を育成することで経済基盤を強化することが求められる。また、国際社会との協力を維持しつつ、国内の制度改革やインフラ整備を進めることができるかどうかが、ガーナ経済の将来を左右すると言える。