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フランス政府、マリとの対テロ協力を停止、諜報員逮捕受け

マリの軍事政権はフランスとの軍事関係を断絶し、イスラム過激派との戦いでロシアに支援を求めている。
アフリカ西部・マリ、首都バマコの通り(Getty Images)

フランス外務省は19日、アフリカ西部・マリとの対テロ協力を停止し、在マリ大使館と領事館の職員2人に退去を命じたと発表した。

この措置は8月にマリ当局がフランス情報機関員を逮捕したことを受けたものだという。

マリ外務省はコメントを出していない。

マリの軍事政権はフランスとの軍事関係を断絶し、イスラム過激派との戦いでロシアに支援を求めている。

この男性は8月、国の不安定化を企てたとしてマリ人将校2人と共に逮捕された。ロイター通信は情報筋の話しとして、この男性はテロ対策に従事していた元フランス軍将校であると伝えている。

フランス外務省はこの男性が諜報員であったかどうかには言及していない。

フランス外務省は19日の声明で、在マリ大使館と総領事館の職員2人をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)に指定したと発表。マリ側は在フランス大使館職員5人に同じ措置を講じたとのこと。

マリとフランスの関係が急速に悪化した背景には歴史的要因、治安情勢の悪化、そして国際的な影響力をめぐる対立が複雑に絡み合っている。まず、マリはかつてフランスの植民地であり、独立後も言語、経済、軍事面で強い結びつきを維持してきた。しかし2012年に北部でイスラム過激派やトゥアレグ反乱勢力が台頭すると、マリ政府は治安維持能力を喪失し、国家存続の危機に直面した。これを受けてフランスは2013年に軍事作戦を展開し、過激派勢力を一時的に後退させた。続いて「バルカン作戦」としてサヘル全域に軍事的プレゼンスを広げ、マリの治安再建を支援した。

しかし時間が経つにつれ、フランス軍の駐留は次第に「解放者」から「占領者」視されるようになった。治安は改善せず、むしろイスラム過激派の活動は拡大し、民間人被害も増加した。フランス軍の空爆や作戦が誤って住民を巻き込む事例もあり、地元の不信感は高まった。また、フランスの存在がマリ政府の主権を損なっているとの批判も根強く、反仏感情が都市部を中心に広がった。

さらに、2020年と2021年に相次いで軍事クーデターが発生し、軍政が権力を掌握すると、フランスとの関係は決定的に悪化した。軍政は国際的な孤立を回避するために新たなパートナーを模索し、ロシアに接近。民間軍事会社ワグネルの活動がマリで確認されるようになり、フランスはこれを強く非難した。一方、マリ軍政はフランスを「内政干渉する旧宗主国」と位置づけ、ワグネルを治安維持の有効な協力者として歓迎した。こうして、マリはフランスとの協力を縮小し、最終的にはフランス軍の撤退を求めた。

関係悪化の背景には「フランスが期待通りに治安を改善できなかった失望」と「軍政による対外戦略の転換」がある。フランスにとってマリはサヘル政策の中核であったが、マリ側にとってはフランス依存から脱却し、ロシアを含む新たな勢力と関係を結ぶ方が政権維持に有利だと判断された。この利害の乖離こそが、両国関係を急速に冷却させた根本的要因である。

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