◎今年3月に結ばれた「無期限の人道的停戦」は破綻した。
エチオピア北部ティグライ州を実行支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)は24日、エチオピア軍が同州に対する攻撃を再開したと報告した。これにより、今年3月に結ばれた「無期限の人道的停戦」は破綻した。
この停戦協定は数万人が死亡した内戦だけでなく、子供を含む数百万人の飢餓を防ぐために結ばれた。
政府はティグライ州への報道機関の立ち入りを禁じているが、主要メディアはTPLFや情報提供者の話しを引用し、「重火器の砲撃音や銃声が確認された」と報じている。
一方、政府は戦闘再開が報じられてから数時間後、TPLFの武器を積んだ航空機が隣国スーダン経由で領空を侵犯したため、撃墜したと発表した。事実か否かは不明。
双方は戦闘の再開を互いに非難している。
TPLFのレダ(Getachew Reda)報道官は24日午前、「エチオピアは北部アムハラ州で1週間挑発行動を繰り返し、ティグライ州に対する攻撃を開始した」とSNSに投稿した。
しかし、政府はTPLFが停戦協定を破ったと非難し、軍と治安部隊は問題にうまく対処していると報告した。
またエチオピア政府は、TPLFの武器を積んだ航空機を撃墜したと発表したが、レダ氏はこれを否定している。
国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は24日、戦闘再開に深い衝撃を受けていると懸念を表明し、「敵対行為の即時停止」を求めた。
AFP通信は情報提供者の話を引用し、「ティグライ州の郊外で23日深夜に銃声を確認した」と報じている。
国軍とTPLFの戦闘は2020年11月に本格化し、これまでに民間人数万人が死亡、数百万人が国内避難民となり、数万人が隣国スーダンなどに逃亡したとされる。
国軍は2020年11月末にティグライ州と周辺地域の大半をTPLFから奪取したが、TPLFは北部地域に拠点を置く他の反政府勢力と同盟を結んでティグライ国防軍(TDF)を結成。昨年6月の奇襲攻撃でティグライ州の支配権を取り戻した。
内戦が本格化した昨年末、TPLFの部隊はティグライ州に撤退し、その後政府も大規模攻撃を控えた。そして3月末、TPLFは政府が提案した「無期限の人道的停戦」に合意し、内戦はひとまず終結したのである。
国連によると、エチオピアを含む東アフリカ諸国はこの40年で最悪の干ばつに見舞われており、数千万人が食料支援を求めている。
紛争開始以来、この地域のインターネットや電話回線は遮断され、現地で起きていることを正確に把握することは困難になっている。
政府はティグライ州を事実上封鎖しているにもかかわらず、国連などの人道機関の援助物資輸送が妨げられているのはTPLFのせいだと非難している。
3月の人道的停戦はこの地域に届く援助物資の量をある程度増やすと期待されていたが、国連によると、効果は限定的だという。
世界食糧計画(WFP)は先週、ティグライ州の人口550万人のうち約半数が深刻な食糧不足に陥っていると発表した。
WFPはレポートの中で、「飢餓は深刻化し、栄養失調の割合は急増し、今年10月の収穫期以降も飢餓は悪化する」と述べている。
2019年にノーベル平和賞を受賞したアハメド(Abiy Ahmed)首相は先週末、ウクライナ南部からエチオピアに穀物を輸送しようとする国連の取り組みを批判し、「国連はエチオピアに恥をかかせようとしている」と主張した。「エチオピアは飢えてなどいません...」