◎国軍とTPLFの戦闘は2020年11月に本格化し、民間人数万人が死亡、数百万人が国内避難民になり、数万人が隣国スーダンに逃亡した。
2021年5月8日/エチオピア北部ティグライ地方の町アグラ、難民キャンプ(AP通信)

エチオピア北部ティグライ州を統治するティグレ人民解放戦線(TPLF)の報道官は25日、アファール州から撤退したと発表した。

アファール州はティグライ州の東に位置し、エリトリアと国境を接している。

アファール警察の責任者はロイター通信の取材に対し、「TPLFの戦闘員はいくつかの地域に残っている」と説明した。

国軍とTPLFの戦闘は2020年11月に本格化し、民間人数万人が死亡、数百万人が国内避難民になり、数万人が隣国スーダンに逃亡したとされる。

国軍は2020年11月末にティグライ州と周辺地域の大半をTPLFから奪取したが、TPLFは北部地域などで活動する反政府勢力と同盟を結んでティグライ国防軍(TDF)を結成、昨年6月の奇襲攻撃でティグライの支配権を取り戻した。

内戦が本格化した昨年末、TPLFの主力部隊はティグライ州に撤退し、その後政府も大規模な侵攻を控えた。そして3月末、TPLFは政府が提案した「無期限の人道的停戦」に合意し、内戦はひとまず終結した。

TPLFの報道官は25日、ロイター通信の取材に対し、「我々の部隊はアファール州から撤退した」と述べ、住民が待ち望んだ食糧援助はまもなくティグライ州に届くと明らかにした。

しかし、アファール警察の責任者によると、TPLFは一部の町から撤退したものの、少なくとも3つの地域にとどまり、ティグライ州の州都メケルに通じる高速道路を占領しているという。

エチオピア政府はコメントを出しておらず、TPLFの撤退が政府との交渉によるものかどうかは不明である。

ティグライ州は危機的な食料・水不足に陥っており、国連によると同州だけで350万~400万人が緊急支援を必要としている。また、少なくとも100万頭の家畜が死に、牧畜で生計を立てていた人々は財産をすべて失った。

先月末に人道的停戦が発効して以来、戦闘は報告されていないようである。TPLFは十分な援助が保証されるのであれば、停戦協定を尊重するとしている。

北部地域で活動する人道団体の代表はアルジャジーラのインタビューの中で、「TPLFの撤退は紛争における一里塚になるだろう」と期待を表明した。

アルジャジーラによると、政府はティグライ州に人道援助を提供する条件のひとつとして、TPLFにアファール州からの撤退を要求していたという。

人道団体の代表は、「TPLFは国際社会の援助、特に国連の援助をスムーズにティグライ州に送るために、アファール州から離れる必要があった」と説明した。

ティグライ州の住民は内戦の末、財産の大半を失い、地域の人口の90%以上が食糧支援を必要とするようになった。しかし、政府はTPLFの支配下に置かれている市民への食糧支援を妨害するためにティグライ州の周辺に兵士を展開し、国連のトラックを何度も止めた。

国連は先月末、ティグライ州の飢餓危機を回避するためには食糧を積み込んだトラックを毎日少なくとも100台届ける必要があると警告した。

世界食糧計画(WFP)によると、この1ヶ月の間にティグライ州に入ったトラックはわずか144台にとどまり、そのうち74台は先週入ったという。

2020年11月/エチオピア、ティグライから非難する住民(Getty Images/AFP通信)
アフィリエイト広告
スポンサーリンク