◎ティグレ人民解放戦線(TPLF)が主導するティグライ国防軍(TDF)は、首都アディスアベバから約400km離れた2つの都市を占領したと伝えられている。
11月2日、エチオピア政府は北部ティグライ地域を支配する反政府勢力が首都に迫っていることを受け、国家非常事態を宣言した。
国家非常事態は即発効し、6カ月間続く。政府は夜間外出禁止令を課し、首都の住民に戦闘に備えるよう命じ、国内の移動と物資輸送を原則禁じ、報道機関の免許を一時停止した。また、政府は期間中、反政府勢力とつながりのある個人を無期限拘留できるようになった。
さらに、一部地域の地方自治体は解散し、軍の指令所が設置されると伝えられている。集会と抗議デモも禁止された。
ティグレ人民解放戦線(TPLF)が主導するティグライ国防軍(TDF)は、首都アディスアベバから約400km離れた2つの都市を占領したと伝えられている。
エチオピア問題を担当する米国のジェフリー・フェルトマン特使は2日の声明で、TDFの首都侵攻の可能性に深刻な懸念を表明した。
国軍とTPLFの戦闘は昨年11月に本格化し、これまでに民間人数千人が死亡した。
国軍は昨年11月末にティグライ地域の大半をTPLFから奪取したが、TPLFは他の反政府勢力と同盟を結んでTDFを結成し、6月の奇襲攻撃で地域の支配権を取り戻した。TDFはティグライ地域に隣接するアムハラ州とアファール州の一部も占領し、支配地域を拡大している。
TPLFは政府に、ティグライ地域周辺の封鎖を解除し、国連や人道団体の支援を受け入れるよう圧力をかけている。ティグライ地域で進行中の飢餓危機は過去10年で世界最悪と見なされており、国連は今年公表したレポートの中で40万人以上が年内に餓死する可能性があると警告した。
エチオピアの閣僚評議会は2日、「TPLFとその同盟組織は国家に重大かつ差し迫った危機をもたらす」と述べ、国家非常事態を宣言した。
さらに閣僚評議会は首都アディスアベバの住民に、所有する銃器を警察システムに登録するか、銃器を使える国軍兵士または知り合いに譲るよう命じた。
閣僚評議会は声明の中で、「首都の住民は自警団を形成し、国軍や治安当局と協力して近隣地域を管理すべき」と述べ、TDFと戦うよう促した。
2019年にノーベル平和賞を受賞したアビィ・アハメド首相のティグライ地域に関する政策はほとんど失敗に終わっている。国連はティグライの住民約600万人への人道支援輸送を妨害する国軍を厳しく非難しているが、アビィ首相はTPLFの管理下に置かれている住民への支援を却下した。
現地メディアによると、TPLFは首都から約400kmの地点に位置する都市デシーとコムボルチャを占領し、首都と幹線道路でつながっている都市ケミセへの侵攻を計画しているという。
政府はデシーとコムボルチャが占領されたことを否定している。
アビィ首相は1日に放送された演説の中で「TPLFは外国軍と結託している」と主張し、「停戦に向けた取り組みは失敗する可能性が高いが、政府は勝つだろう」と述べた。
一方、米国のジョー・バイデン大統領は、アフリカ成長機会法(AGOA)に基づく米国市場への免税アクセスの対象リストからエチオピアを除外する予定と警告した。
バイデン大統領は議会に宛てた書簡の中で、「エチオピア政府の重大な人権侵害」を非難した。除外措置は来年1月に発効する予定。
エチオピア政府は、「反政府勢力に立ち向かった者たちを罰するべきではない」と述べ、米国に決定の取り消しを求めた。
専門家によると、エチオピアはAGOAから除外されると、推定100万人の雇用を失う可能性があるという。
米国国際開発庁の高官は2日、AP通信のインタビューの中で、「ティグライ地域で進行中の(国軍の)妨害は、恐らく世界で最もひどい人道侵害」と語った。「政府はTPLFが支配している地域への支援を体系的に妨害しており、飢餓危機はティグライ地域だけでなく近隣のアムハラ州やアファール州などにも広がっています...」