◎政府軍とティグライ地域の与党、ティグレ人民解放戦線(TPLF)は昨年11月に衝突し、少なくとも数千人が死亡した。
6月21日、エチオピアのアビィ・アハメド首相は2018年の政権奪取以来初となる総選挙に臨んだ。
アビィ首相は人民代表院(下院:定数547人)の過半数を獲得する可能性が極めて高いと伝えられている。しかし、昨年11月に発生したティグライ紛争の震源地である北部ティグライ地域の投票は延期された。
また、他のいくつかの地域でも治安、票集計、票の運搬の問題などで投票が遅れている。
2015年以来となる今回の選挙は2020年8月に予定されていたが、コロナウイルスの影響で約10カ月遅れた。地元メディアによると、当初の予定通りに投票が進めば、各選挙区の結果は5日以内、最終的な結果は23日以内に確定する予定だという。
アビィ首相は2018年4月の連立政権発足で権力を握り、7月には隣国エリトリアとの歴史的な和平協定を実現させ、翌年ノーベル平和賞を受賞した。しかし、受賞から約1年後、アビィ首相はティグライ地域の与党、ティグレ人民解放戦線(TPLF)との紛争を開始した。
アビィ首相は昨年9月、コロナウイルスの感染防止対策の一環として、国内での選挙活動を一切禁じた。TPLFはこれに猛反発し、「制限は政府の独裁体制を強化する違法行為」と述べ、政府との関係は急速に悪化した。
政府軍とTPLFは約1カ月間、主にティグライ地域で衝突し、少なくとも数千人が死亡した。また、ティグライの住民推定200万人が国内避難民になり、推定数万人が隣国スーダンの難民キャンプに避難し、数百人がエリトリア軍の兵士に処刑されたと伝えられている。国連は先日、ティグライの住民少なくとも35万人が壊滅的な飢餓の危機に瀕していると警告した。
エチオピアの全国選挙管理委員会によると、40以上の政党が候補者を擁立したが、その大半は地方の小政党だという。
野党は昨年9月の選挙活動禁止とティグライ地域の住民に対する弾圧の影響で、選挙の準備をほとんど行えなかったと不満を口にしている。
主要野党のひとつ、オロモ解放戦線は3月、政府に脅迫されたと主張し選挙から撤退した。
ティグライ地域の与党、ティグレ人民解放戦線(TPLF)は現在テロ組織に指定されており、一部の指導者は逮捕されたが、その他はティグライでゲリラ戦争を続けている。
地元メディアによると、投票を延期する選挙区は日を追うごとに増えたという。専門家は、「主に北部地域の治安はティグライ紛争の影響で劇的に悪化し、選挙を行える状態ではない」と指摘した。しかし、憲法は選挙を要求しており、期日内に速やかに実施する必要がある。
選挙委員会によると、3,700万人以上の有権者が21日の投票に向け、事前登録を済ませたという。しかし、ティグライ地域の38議席とその他の64議席、合わせて102議席を決める地区の投票は延期された。
延期された地区の投票は9月6日に行われると伝えられているが、ティグライの投票日はまだ決まっていない。
EUの選挙当局は先月、「エチオピア政府は通信機器の持ち込みを許可せず、独立した活動を行う権利を保証しなかったため、今回の総選挙に選挙オブザーバーは派遣しない」と発表した。
エチオピア政府は「選挙の信頼性は自分たちで証明できるため、外部のオブザーバーは必要ない」と述べた。
アビィ首相は選挙に対する国際的な懸念を却下し、「エチオピアは有権者に自由で公正な選挙を保証する」と主張している。