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エジプト25年8月都市部インフレ率12.0%、市場予想下回る

エジプト経済は近年、外部環境の悪化や国内構造的課題に直面している。
エジプト、首都カイロの食料品店(Getty Images)

エジプトの都市部の先月の消費者物価指数(CPI)が7月を下回った。政府の統計機関CAPMASが10日、明らかにした。

それによると、都市部の25年8月のインフレ率は前年同月比12.0%増、7月は13.9%であった。

ロイター通信のアナリストは12.7%と予想していた。

エジプトのインフレ率は過去最高の38%を記録した23年9月以降低下傾向にあり、25年1月は24.0%、2月は12.8%、3月は13.6%に低下した。5月は14.4%、6月は14.9%であった。

24年3月に国際通貨基金(IMF)と合意した80億ドルの金融支援パッケージが低下に貢献している。

インフレ減速を受け、中央銀行は8月末の金融政策で政策金利を2.0%引き下げ、貸出金利を23%、預金金利は22%に設定した。

エジプト経済は近年、外部環境の悪化や国内構造的課題に直面している。エジプトはアフリカ北東部に位置し、人口が約1億人を超える大国であるが、経済成長と人口増加のバランスに課題を抱えている。

2020年代に入り、コロナパンデミックによる観光業の打撃、国際原油価格の変動、世界的なインフレの影響を受け、経済成長は鈍化した。特に観光業はGDPの重要な柱であるが、パンデミックにより外国人観光客が激減し、外貨収入の減少と雇用喪失が深刻化した。

インフレ率の上昇も国民生活に大きな影響を与えている。食料品や日用品の価格が急騰し、低所得層を中心に生活費の負担が増大している。中銀は通貨安やインフレ抑制を目的に利上げを行う一方で、企業や消費者の借入コストも上昇している。このため、国内消費の回復が遅れ、経済全体の成長を制約する要因となっている。

貿易収支の悪化も問題である。エジプトは輸入依存度が高く、特に食料やエネルギーの輸入に頼っている。そのため、国際市場での価格上昇や供給制約は経済に直接的な影響を及ぼす。また、米ドル建て債務の返済負担が増しており、外貨準備高の減少や通貨の下落圧力を招いている。政府はIMFや国際金融機関からの支援を受けつつ財政改革を進めているが、社会的反発を伴う補助金削減や増税措置の実施は慎重を要する状況である。

一方で、長期的には経済改革やインフラ投資が進展している。スエズ運河関連事業やエネルギー開発、都市開発プロジェクトは外資を呼び込み、雇用創出や経済の多角化に寄与している。また、デジタル経済やICT分野への投資も拡大しており、若年人口の活用を通じて成長の可能性が期待されている。しかし、教育水準や労働市場のミスマッチ、貧困層の生活改善の遅れは依然として課題であり、経済成長の恩恵が広く国民に行き渡るには時間を要する。

エジプト経済は外的ショックや国内構造的問題に直面する一方、インフラ投資や経済改革を通じた成長ポテンシャルを有している。短期的にはインフレ抑制、外貨確保、生活支援が課題となるが、中長期的には経済の多角化と若年層の労働力活用が持続可能な成長の鍵となる。

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