エジプト政府、補助金対象外の「パン」に上限価格設定、インフレ対策
エジプト政府は過去にも物価上昇時にパン価格の統制を導入し、2022年や2024年にも一時的な措置を取った。
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エジプト政府は12日、パン屋で販売される補助金対象外のパンに上限価格を設定する措置を導入した。燃料価格の上昇や物価高によって負担が増す中、主食であるパンの価格高騰を抑え、消費者の負担を軽減することが狙いである。
政府は内務省の通達で、補助金制度の対象外であるパンの価格を重量ごとに制限した。具体的には80グラムのパン1個の上限を2エジプトポンド(約6円)とし、サンドイッチ用として一般的な50グラムの「フィノ」パンも同じく2ポンドに設定した。さらに60グラムのパンは1.5ポンド、40グラムは1ポンドが上限となる。政府は声明で、市民が「公正で適切な価格」でパンを入手できるよう市場を調整する措置だと説明した。
今回の措置の背景には、エネルギー価格の急騰によるインフレ圧力がある。中東情勢の緊張に伴い世界の原油価格が上昇し、エジプト政府は燃料価格を引き上げた。輸送費や生産コストの上昇は食品価格にも波及するとみられ、特に主食のパンの価格上昇が家計に与える影響が懸念されていた。
人口約1億2000万人を抱えるエジプトでは、パンは日常的に消費される最も重要な食品の一つであり、価格変動は政治的にも極めて敏感な問題とされる。同国は世界最大級の小麦輸入国で、国内消費量の半分以上を海外からの輸入に依存している。また政府の補助金付きパン制度は約6900万人が利用し、低所得層の生活を支える社会政策の柱となっている。
当局は今後、監視員を配置してパン屋の価格表示や販売状況をチェックし、違反した事業者には罰則を科す方針を示した。しかし、業界関係者の間では、こうした価格統制が実際に機能するかについて懐疑的な見方も出ている。ある穀物業界関係者は、原料コストが上昇する中で政府が自由市場の価格を完全に統制するのは難しいと指摘する。
特に小麦価格の上昇は大きな負担となっている。最近では燃料費や輸送費の高騰の影響で、小麦価格が1トン当たり約2000エジプトポンド上昇し、およそ1万6000ポンドに達した。こうしたコスト増に対応するため、パン屋が品質を下げて利益を確保する可能性も指摘されている。
一方で、商工会議所のパン業界部門の関係者は、コスト増による1個当たりの価格上昇は比較的小さいため、多くのパン屋が一定程度は負担を吸収できる可能性があると説明する。需要と供給のバランスが働けば、品質の大幅な低下は起きにくいとの見方も示している。
エジプト政府は過去にも物価上昇時にパン価格の統制を導入し、2022年や2024年にも一時的な措置を取った。今回の価格上限はインフレが続く中で生活必需品の価格を抑えようとする政府の対応の一環で、今後の市場動向と実効性が注目されている。
