エボラワクチン、コンゴの発生地に到着、WHOが感染拡大阻止に奔走
エボラ出血熱はエボラウイルスによって引き起こされるウイルス性出血熱であり、致死率が極めて高い感染症である。
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世界保健機関(WHO)は12日、コンゴ民主共和国の中央カサイ州でエボラ出血熱の感染者が多数確認されていることについて、保健当局が対象地域へのアクセスを制限され、資金面でも問題に直面していると明らかにした。
保健省は先週、中央カサイ州でエボラ症例が確認されたと報告。少なくとも16人が死亡、感染疑いは68人にのぼり、その中には医療従事者も含まれている。
中央カサイ州でエボラが確認されたのは18年ぶり。同州は道路がほとんど整備されておらず、首都キンシャサから1000キロ以上離れている。
WHOのコンゴ担当者はジュネーブの記者団に対し、「12日に国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)のヘリコプターがこの地域にワクチン400回分を輸送した」と語った。
また担当者は「さらに1500回分がキンシャサから送られる予定である」と明らかにした。
さらに、「過去7日間はカサイ地方へのアクセスに苦労したが、現在はMONUSCOと連携し、他の医療物資などの輸送を加速させている」と述べた。
エボラウイルスはリスクグループ4に該当するウイルスのひとつ、治療開始が遅れると致死率は90%に達する。感染者の血液、臓器、体液に直接触れることで感染する。
WHOはコンゴの対応チームと共に専門家をカサイ州に派遣し、疾病監視体制の強化、治療の提供、感染予防を実施している。
WHOは声明で、「WHOとコンゴ当局は現地で本格的な対応に向けた取り組みを進めているが、活動資金が必要だ」と訴えた。
アフリカ疾病予防管理センター(CDC)は11日、疑い症例がこの数日で28人から68人に増加し、感染地域も2地区から4地区に拡大、死者数は16人にのぼったと報告した。
エボラ出血熱はエボラウイルスによって引き起こされるウイルス性出血熱であり、致死率が極めて高い感染症である。1976年にスーダンとコンゴ(当時のザイール)で初めて確認され、コンゴ国内のエボラ川にちなんで命名された。エボラウイルスはフィロウイルス科に属し、現在までに5種の型が確認されている。その中でもザイール型は特に致死率が高く、時に90%に達する。
自然宿主は果物コウモリ(フルーツバット)とされており、これらのコウモリが媒介動物としてウイルスを保持していると考えられている。人間への感染は感染動物の血液や体液、あるいはそれらに汚染された食品・物品との接触によって起こる。その後、ヒトからヒトへの感染は主に血液、唾液、汗、尿、嘔吐物、母乳、精液などの体液を介して広がる。また、死後の遺体処理の際にも高リスクであり、アフリカの一部地域における伝統的な埋葬習慣が感染拡大の要因となった例もある。
潜伏期間は2日から21日程度で、初期症状は発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などインフルエンザ様の症状から始まる。進行すると、嘔吐、下痢、発疹、内出血、臓器不全などが見られ、重症化すれば死亡に至る。症状の進行が急激であることが多く、特に治療が遅れた場合には致命的である。
有効な特効薬は長らく存在しなかったが、近年では「インマズブ(Inmazeb)」や「エブガルド(Ebanga)」といった抗ウイルス抗体治療薬が開発され、治療成績が向上しつつある。また、予防のためのワクチンとして、「rVSV-ZEBOV(エルベボ)」が2019年にWHOにより承認され、一部地域での接種が進められている。
エボラ出血熱の最大の流行は2014年から2016年にかけて西アフリカ(ギニア、リベリア、シエラレオネ)で発生し、2万人以上が感染し、1万人を超える死者を出した。このパンデミックでは医療体制の脆弱性や国境を越えた感染拡大が問題となり、国際社会の対応の遅れが厳しく批判された。以降、WHOや各国政府、NGOなどはエボラ対策を強化し、感染拡大を未然に防ぐための早期警戒システムや医療支援ネットワークの構築が進められた。
感染拡大防止には迅速な隔離、接触者追跡、適切な防護具の使用、衛生管理、地域住民への啓発などが不可欠である。特に、患者と接触する医療従事者は高リスクにさらされるため、徹底した感染防護対策が求められる。
エボラ出血熱はアフリカ地域を中心とした風土病であるものの、現代の交通網においては、グローバルな感染拡大も起こり得る。そのため、国際的な監視体制と即応能力の向上が今後も重要な課題であり続ける。