WHO、コンゴ南部でエボラワクチンの接種開始、16人死亡
エボラウイルスはリスクグループ4に該当するウイルスのひとつ、治療開始が遅れると致死率は90%に達する。感染者の血液、臓器、体液に直接触れることで感染する。
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世界保健機関(WHO)は14日、コンゴ民主共和国の中央カサイ州でエボラワクチンの接種を開始したと発表した。
それによると、対象者はエボラ出血熱への感染が疑われる市民と医療従事者。保健省は先週、中央カサイ州でエボラ症例が確認されたと報告し、少なくとも16人が死亡、感染疑いは68人にのぼり、その中には医療従事者も含まれていると明らかにしていた。
WHOによると、ワクチンの初回発送分400回分のみが現地に到着し、残りは後日配送される予定。この地域は道路が整備されておらず、ヘリでワクチンを届ける必要がある。
WHOは約4万5000回分のワクチンを確保したと報告している。今後、接種ペースは加速する見込みだ。国内には2000回分のエボラワクチンも備蓄されている。
エボラウイルスはリスクグループ4に該当するウイルスのひとつ、治療開始が遅れると致死率は90%に達する。感染者の血液、臓器、体液に直接触れることで感染する。
WHOはコンゴの対応チームと共に専門家をカサイ州に派遣し、疾病監視体制の強化、治療の提供、感染予防を実施している。
エボラ出血熱はエボラウイルス属に属するフィロウイルスによって引き起こされる重篤な感染症である。1976年にスーダンとザイール(現コンゴ民主共和国)で同時に発生したのが最初の確認例であり、その後もアフリカ中部や西アフリカを中心に断続的に流行してきた。致死率は流行の状況や医療体制によって異なるが、25%から90%に達することもあり、世界的に最も危険なウイルス感染症の一つとされている。
感染経路は、最初は野生動物との接触を通じて人に伝わると考えられている。コウモリが自然宿主とされ、チンパンジーやゴリラなど霊長類への感染を経て人間に広がるケースが多い。その後、人から人へは血液や体液への直接接触によって感染が拡大する。患者の看病や埋葬の際に体液に触れることで感染する例が多く、特に医療従事者や遺体を扱う人々の間で被害が集中する傾向がある。
潜伏期間は2日から21日で、発症すると発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの非特異的症状が現れる。進行すると嘔吐や下痢、出血傾向、臓器不全などが起こり、急速に重症化する。治療法は長らく確立されていなかったが、近年は抗ウイルス薬や抗体医薬が試験的に用いられ、一部で効果が確認されている。また、WHOは有効性が確認されたワクチンを承認し、流行地域での接種が進められている。
エボラ出血熱が特に恐れられるのは、その致死率の高さに加えて、流行時に医療体制を容易に崩壊させてしまう点である。2014年から2016年にかけて西アフリカで発生した大規模流行では、ギニア、リベリア、シエラレオネを中心に約3万人が感染し、1万1千人以上が死亡した。この流行は国際的な保健システムの脆弱さを露呈し、国境を越える感染症対策の重要性を改めて浮き彫りにした。
現在では、感染地域での監視体制や早期隔離、接触者追跡、ワクチン接種が流行抑制の中心的手段となっている。エボラ出血熱は単なる地域的な公衆衛生問題にとどまらず、国際社会全体が協力して取り組むべき課題として位置付けられている。