コンゴの「エボラ出血熱」感染例急増、アフリカCDCが発表
エボラ出血熱はエボラウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性疾患であり、高い致死率と激しい症状を特徴とする。
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アフリカ疾病予防管理センター(CDC)は11日、コンゴ民主共和国の中央カサイ州で確認されたエボラ出血熱の感染者が2倍以上に増加したと発表した。
保健省は先週、中央カサイ州でエボラ症例が確認されたと報告。「少なくとも15人が死亡、感染疑いが28人で、その中には医療従事者も含まれる」と明らかにしていた。
アフリカCDCによると、疑い症例はこの数日で28人から68人に増加。感染地域も2地区から4地区に拡大し、死者数は16人にのぼった。
エボラウイルスはリスクグループ4に該当するウイルスのひとつ、治療開始が遅れると致死率は90%に達する。感染者の血液、臓器、体液に直接触れることで感染する。
アフリカCDCの主任顧問は記者会見で、「東部地方の紛争がエボラ封じ込めを複雑化させている」と指摘。この地域は人口密度が高いため、エボラが急速に広がる恐れがあると述べた。
世界保健機関(WHO)がコンゴの対応チームと共に専門家をカサイ州に派遣し、疾病監視体制の強化、治療の提供、感染予防を実施している。
エボラ出血熱はエボラウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性疾患であり、高い致死率と激しい症状を特徴とする。ウイルスは1976年にスーダンとザイール(現コンゴ民主共和国)で同時に確認され、流行地の近くを流れるエボラ川にちなんで命名された。以後、アフリカ中部や西部を中心に断続的に流行が発生しており、地域社会や国際社会に深刻な打撃を与えてきた。
感染経路はコウモリや霊長類など野生動物から人間へ感染する「人獣共通感染」が起点となり、その後は感染者の体液や血液に直接触れることで人から人へと広がる。医療従事者や介護者が特に感染リスクを抱えており、適切な防護具を欠いた環境では短期間に集団感染が拡大する。空気感染はしないが、遺体処理の際の接触などを通じて伝播しやすいため、文化的な葬送習慣も流行の拡大に影響を与える。
症状は潜伏期を経て突然現れ、高熱、頭痛、筋肉痛、下痢や嘔吐などの全身症状が出る。進行すると肝臓や腎臓の機能障害を引き起こし、体内出血や皮下出血など重篤な症状に至る。致死率は流行の規模や医療環境により大きく異なるが、概ね25〜90%と極めて高い。特に医療体制が脆弱な地域では死亡率が上昇しやすい。
最大の流行は2014年から2016年にかけて西アフリカで発生し、ギニア、リベリア、シエラレオネを中心に2万8000人以上が感染、1万1000人以上が死亡した。この流行は国際社会を震撼させ、WHOが緊急事態を宣言する事態となった。その後もコンゴなどで度々流行が確認されており、制圧と再流行の繰り返しが続いている。
治療法は長らく確立されていなかったが、近年は有効性を示す抗ウイルス薬や抗体製剤が開発され、実際に臨床で用いられるようになった。また、エボラワクチンも実用化され、接触者追跡と併用することで流行拡大を防ぐ効果が確認されている。それでもなお、流行地域の医療資源不足、政治的不安定、地域住民の医療不信が対策の妨げとなっており、国際的な支援体制の継続が不可欠である。
エボラ出血熱は単なる感染症にとどまらず、公衆衛生、社会経済、国際安全保障に深い影響を及ぼす脅威である。今後も流行は断続的に発生すると見られるため、迅速な検知、地域社会との協力、医療体制の強化が求められる。