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スーダン・ダルフール地方でコレラ急拡大、死者3000人超える、WHOが発表

軍事政権と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」は23年4月から首都ハルツームなどの支配権を争っている。
スーダン、西部ダルフール地方、国際NGOの医療テント(Getty Images)

世界保健機関(WHO)は23日、アフリカ北東部・スーダンのダルフール地方でコレラが蔓延し、過去14カ月間で3000人以上が死亡したと明らかにした。

WHOスーダン事務所の代表はオンライン記者会見で、「北ダルフール州の40万6000人を対象とするコレラ予防接種キャンペーンを開始した」と語った。

またWHOは「汚染された食品や水を原因とするコレラの現在の流行は昨年7月に発生した後、戦乱の続く同国全18州に拡大した」と説明した。

WHOによると、ダルフールの半数以上の地域で感染者が急増。この数週間で1万2739人が感染、358人が死亡したという。

国連と国境なき医師団(MSF)は連携してワクチン接種キャンペーンを展開してきたが、ダルフールとその周辺地域で戦闘が激化し、数十万人が新たに避難を余儀なくされた結果、避難民キャンプの衛生状況が悪化。コレラの流行に拍車をかけた。

軍事政権と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」は23年4月から首都ハルツームなどの支配権を争っている。

この内戦は世界最悪の人道危機に発展。人口の半数以上にあたる約2500万人が飢餓に直面し、数万人が死亡、1400万人以上が避難を余儀なくされ、うち約500万人が周辺国に逃れたと推定されている。

激戦が続くダルフール地方では複数の地域で餓死者が出ているという情報もある。被害の全容は明らかになっておらず、調査が進む目途も立っていない。

国連は23年4月~24年6月の間にハルツームだけで2万6000人以上が死亡。さらに数千人が病気や栄養失調などで死亡したと推定している。

正確な死傷者数は明らかになっていないが、昨年公表されたデータによると、開戦から14か月間でハルツームだけで6万1000人が死亡した可能性がある。

コレラは、コレラ菌によって引き起こされる急性の感染症であり、主に汚染された水や食物を介して人から人へ広がる疾患である。感染すると潜伏期間は数時間から5日程度と短く、突然の激しい下痢と嘔吐を特徴とする。症状は「米のとぎ汁様下痢」と呼ばれる白濁した水様便であり、大量の体液や電解質が失われるため、短時間で重度の脱水やショックに至る危険がある。治療が遅れると致死率は50%に達することもあるが、経口補水療法や点滴治療を適切に行えば致死率は1%未満に抑えられる。

コレラの歴史は古く、19世紀には世界的な流行を繰り返し、いわゆる「コレラのパンデミック」として恐れられた。特にアジアからヨーロッパに伝播した流行は多くの死者を出し、公衆衛生の重要性を各国に認識させる契機となった。日本でも江戸時代末期から明治期にかけて度々流行し、多数の死者を出した記録が残っている。

現代においてもコレラは根絶されておらず、特に上下水道の整備が不十分な地域で発生している。WHOによると、毎年数百万人がコレラに感染し、数万人が死亡している。2022年にはアフリカや中東を中心に大規模な流行が報告され、内戦や自然災害で生活インフラが破壊された地域で感染が拡大した。

予防の基本は安全な飲料水の確保と衛生環境の改善であり、上下水道や下水処理の整備が最も効果的である。また、経口コレラワクチンも存在し、流行地域への渡航者や人道支援活動に従事する人々に使用されている。

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