コンゴ東部で軍兵士が同僚3人を射殺、逮捕 北キブ州

事件は州都ゴマから数十キロ離れた前線近くで23日遅くに発生した。
2022年5月24日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマ郊外の道路(Moses Sawasawa/AP通信)

アフリカ中央部・コンゴ民主共和国の東部・北キブ州で陸軍の兵士が3人の同僚を殺害したとして逮捕された。地元当局が24日、明らかにした。

それによると、事件は州都ゴマから数十キロ離れた前線近くで23日遅くに発生。北キブ州では国軍と同国最大の反政府勢力M23(3月23日運動)との戦闘が続いている。

AP通信は当局者の話しとして、「兵士たちの給与が支払われた後、複数人が口論になり、その中の1人が発砲した」と伝えている。

この銃撃で2人が死亡、少なくとも9人が病院に搬送され、その後、意識不明の重体となっていた1人が死亡した。

軍の報道官は声明で、発砲があったことを認め、「発砲した兵士を含む、言い争いに関与した者たちを処罰する」と述べた。

また報道官は逮捕された兵士が軍事法廷に移送されたと明らかにした。

一部の地元住民はM23の工作員が事件に関与している主張。M23は声明を出していない。

コンゴと隣国ルワンダは先週、米国の仲介のもと、暫定的な和平協定に署名した。

トランプ政権はコンゴ東部での紛争を終わらせ、この地域の希少な鉱物資源(タンタル、金、コバルト、銅、リチウムなど)に関する協定を結び、欧米諸国の投資を呼び込みたいと考えている。

コンゴ政府は東部紛争への対応に苦慮しており、鉱物資源と引き換えに、米国に安全保障を提供するよう求めてきた。

M23が主導する「コンゴ川同盟」は1月末に東部の最大都市である北キブ州ゴマを占領。その後、東部第2の都市・南キブ州ブカブに進軍、制圧した。

それ以来、アフリカ諸国に加え、カタールと米国が和平に向けた協議を仲介してきた。

カタールが仲介した交渉は既に決裂している。

コンゴはルワンダ政府がM23を支援していると非難している。国連によると、ルワンダ軍の兵士約4000人がコンゴ東部に駐留し、M23を支援しているという。

米国務省はウェブサイトに投稿した声明で、「この合意には領土の不可侵性の尊重と敵対行為の禁止、武装集団への支援停止、武装解除などの規定が含まれている」と述べた。

また同省は「両国は来週、閣僚級協議を行い、最終的に大統領が和平協定に署名することになる」とした。

コンゴ川同盟の指導者であるコルネイユ・ナンガア(Corneille Nangaa)氏は4月、AP通信のインタビューで、「米国が求めている鉱物協定は何の役にも立たず、政府が米国とどのような協定を結ぼうと、戦いを止めない」と語った。

コンゴ川同盟は3月、支配下に置いた北キブ州の要衝ワリカレから部隊を撤退させると表明。国連はこの決定を歓迎し、撤退を機に停戦交渉を加速させるよう促した。

しかし、M23はその後、国軍とその支援民兵がワリカレに攻撃ドローンを送り込んできたと主張。撤退を取り消した。

ワリカレの人口約1万5000人。ゴマの北西約125キロに位置し、第4の都市キサンガニの400キロ圏内にある。

東部4州の主要道路がワリカレを通過する。国軍はこの町を失ったことで、東部4州の主要都市にアクセスしづらくなった。

双方は紆余曲折の末、互いに歩み寄る姿勢を見せ、M23はワリカレから部隊を撤退させたとみられる。

アフリカ諸国の調停努力が頓挫する中、カタールは3月、コンゴのチセケディ(Félix Tshisekedi)大統領とルワンダのカガメ(Paul Kagame)大統領を招き、その後、仲介国のアンゴラと共に「即時かつ無条件の停戦」を求める共同声明を出した。

政府とM23は4月、和平に向けて協議を継続することで合意したが、それ以降も東部の広い範囲で戦闘が続いている。

M23はルワンダとウガンダの支援を受けていたコンゴのツチ族武装集団の元戦闘員で構成され、2009年3月に締結された和平協定により、コンゴ軍に編入された。

しかし、M23の戦闘員はコンゴ軍に編入された後もルワンダ国境付近で活動を続け、13年の紛争に敗れるとルワンダやウガンダに逃亡。21年11月頃から活動を活発化させ、北キブ州の複数の集落を占領した。

コンゴ、米国、国連安保理はルワンダ政府がM23を支援していると指摘。ルワンダは長年、この主張を否定してきた。

1994年のルワンダ大虐殺に関与したとされるフツ族の住民数千人がコンゴ東部に逃げ込んで以来、両国の関係は緊張状態にある。

M23はコンゴに逃げ込んだフツ族の掃討を目指しているものとみられる。ルワンダはコンゴ政府が組織的に大虐殺の加害者であるフツ族を匿っていると主張している。

ルワンダ大虐殺の犠牲者は80万~100万人と推定されている。フツ族の過激派はツチ族だけでなく、フツ族の穏健派も殺害した。

国連はコンゴ国内で活動するルワンダ兵を最大4000人と推定している。

政府とM23による戦争は世界最大級の人道危機に発展。700万人以上が避難を余儀なくされている。

国際社会はこの紛争が1990年代から2000年代の第2次コンゴ戦争のような規模に発展することを恐れている。この戦争では500万~600万人が死亡したと推定されている。

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