コンゴ前大統領、反政府勢力M23の占領地ゴマを訪問=報道

コンゴ東部では国際テロ組織アルカイダやイスラム国(ISIS)とつながりのある過激派など、120以上の武装勢力が活動。そのほとんどが土地や貴重な鉱物などを守るために戦っている。
南アフリカ、コンゴ民主共和国のカビラ前大統領(ロイター通信)

アフリカ中央部・コンゴ民主共和国のカビラ(Joseph Kabila)前大統領が同国最大の反政府勢力M23(3月23日運動)の支配下にある東部・北キブ州ゴマを訪れ、地元住民と面会した。現地メディアが28日に報じた。

ロイター通信は情報筋の話しとして、カビラ氏はM23が主導する「コンゴ川同盟」の指導者コルネイユ・ナンガア(Corneille Nangaa)氏の許可を得てゴマに入ったと伝えている。

ナンガア氏もソーシャルメディアへの投稿で、カビラ氏がゴマに入ったことを認めた。

カビラ氏本人はコメントしておらず、同氏がゴマにいる写真も公開されていない。

議会上院は先週末、カビラ氏の免責特権を解除する議案を賛成88ー反対5で可決した。

カビラ氏は2001年から2019年まで大統領を務め、自身に対する激しい抗議デモの後、退陣。M23の反乱を支援したとして、人道に対する罪で指名手配されている。

この訪問が事実であれば、米国が主導するコンゴとルワンダの和平交渉を複雑にする可能性がある。コンゴ東部にはトランプ米政権が採掘を支援したいと考えている貴重な鉱物資源がある。

カビラ氏は今年1月にもゴマに入り、M23幹部らと面会したとされる。カビラ氏はこの際、政府とM23の和平を仲介する用意があると表明していた。

コンゴ川同盟は1月末にゴマを占領。その後、東部第2の都市である南キブ州ブカブに進軍、制圧した。

ゴマには国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)の本部と南部アフリカ地域圏の基地があり、郊外の避難民キャンプでは数百万人がテント生活を送っている。

欧米諸国は隣国ルワンダによるM23への軍事支援を非難。一部の国は援助を停止した。

コンゴ川同盟は3月、支配下に置いた北キブ州の要衝ワリカレから部隊を撤退させると表明。国連はこの決定を歓迎し、撤退を機に停戦交渉を加速させるよう促した。

しかし、M23はその後、国軍とその支援民兵がワリカレに攻撃ドローンを送り込んできたと主張。撤退を取り消した。

ワリカレの人口約1万5000人。ゴマの北西約125キロに位置し、第4の都市キサンガニの400キロ圏内にある。

東部4州の主要道路がワリカレを通過する。国軍はこの町を失ったことで、東部4州の主要都市にアクセスしづらくなった。

双方は紆余曲折の末、互いに歩み寄る姿勢を見せ、M23はワリカレから部隊を撤退させたとみられる。

M23はルワンダとウガンダの支援を受けていたコンゴのツチ族武装集団の元戦闘員で構成され、2009年3月に締結された和平協定により、コンゴ軍に編入された。

しかし、M23の戦闘員はコンゴ軍に編入された後もルワンダ国境付近で活動を続け、13年の紛争に敗れるとルワンダやウガンダに逃亡。21年11月頃から活動を活発化させ、北キブ州の複数の集落を占領した。

コンゴ、米国、国連安保理はルワンダ政府がM23を支援していると指摘。ルワンダは長年、この主張を否定してきた。

1994年のルワンダ大虐殺に関与したとされるフツ族の住民数千人がコンゴ東部に逃げ込んで以来、両国の関係は緊張状態にある。

M23はコンゴに逃げ込んだフツ族の掃討を目指しているものとみられる。ルワンダはコンゴ政府が組織的に大虐殺の加害者であるフツ族を匿っていると主張している。

ルワンダ大虐殺の犠牲者は80万~100万人と推定されている。フツ族の過激派はツチ族だけでなく、フツ族の穏健派も殺害した。

国連はコンゴ国内で活動するルワンダ兵を最大4000人と推定している。

政府とM23による戦争は世界最大級の人道危機に発展。700万人以上が避難を余儀なくされている。

M23はブカブ近郊の空港も占拠した。

国際社会はこの紛争が1990年代から2000年代の第2次コンゴ戦争のような規模に発展することを恐れている。この戦争では500万~600万人が死亡したと推定されている。

政府とM23は先月、和平に向け協議を継続することで合意したが、それ以降も東部の広い範囲で戦闘が続いている。

ロイターによると、カビラ氏は25日夜にゴマに到着したとみられる。

ナンガア氏はSNSへの投稿で、「カビラ氏がゴマに入った」と述べたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。カビラ氏本人も発言しておらず、どこにいるかも不明である。

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