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西アフリカの「カカオ産業」窮地に、国際市場の価格急落


世界のチョコレート産業を支える西アフリカのカカオ農業は価格の乱高下と気候変動という二重の課題に直面している。
2026年3月6日/アフリカ西部・ガーナのカカオ農家(AP通信)

西アフリカの主要産業であるカカオ栽培が、国際市場の価格急落により深刻な打撃を受けている。ガーナやコートジボワールでは売れ残ったカカオ豆が倉庫で腐敗し、農家の間では農地を別の用途に転用する動きが広がっている。

西アフリカは世界のカカオ豆生産の約7割を担う最大の供給地域であり、とりわけコートジボワールとガーナは世界市場を支える中心的存在である。コートジボワールではカカオ輸出が国家歳入の約40%、ガーナでも約15%を占める重要産業となっている。

しかし国際相場は近年大きく変動した。2024年には天候不順や病害による供給不安などを背景に、カカオ先物価格が1トンあたり1万2000ドルを超える歴史的高値を記録した。ところがその後は需要の鈍化や供給増加などの影響で急落し、現在は4000ドル前後まで下落している。この急激な値下がりにより、政府が設定する農家向け買い取り価格と市場価格の差が拡大し、取引が停滞した。結果として大量のカカオ豆が売れ残り、倉庫で腐敗する事態が起きている。

ガーナの農家マヌ・ヤウ・フォフィ(Manu Yaw Fofie)さんはカカオ栽培を代々続けてきたが、収穫量はかつての年間300袋から2025年には50袋程度にまで減少したという。気候変動による雨不足や病害の拡大が影響しており、収入の減少は深刻だ。生活費を確保するため、フォフィさんは農地の一部を違法な砂採掘業者に貸し出す決断をした。建設需要の高まりで砂は高値で取引されるが、採掘は土地を不毛化させ、農地として再利用できなくなる危険がある。

同様の動きはコートジボワールでも見られる。農家の中には農地を違法な金採掘業者に貸し出す例もあり、カカオより金の方が利益を得やすいという声も出ている。農家団体の関係者は「カカオが売れなくても家族を養うための収入は必要だ」と語り、苦しい現状を訴える。

各国政府も対応を迫られている。ガーナ政府は市場の需要を回復させるため、カカオ豆の固定価格を約28%引き下げた。またコートジボワールでも2026年の農家向け価格を大幅に引き下げ、輸出業者が購入しやすい環境を整えようとしている。ただし、農家からは「生産コストを考えると利益がほとんど残らない」との不満が強い。

カカオ産業はもともと小規模農家に依存し、気候変動や価格変動の影響を受けやすい構造的な弱点を抱える。今回の価格暴落はこうした脆弱さを改めて浮き彫りにした。収入の不安定さから若い世代が農業を敬遠する傾向もあり、専門家は「農家がカカオ栽培を離れれば、将来的な供給にも影響が出る」と指摘している。

世界のチョコレート産業を支える西アフリカのカカオ農業は価格の乱高下と気候変動という二重の課題に直面している。

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