◎首都ンジャメナを含むいくつかの都市で20日に行われた抗議デモは暴動に発展した。
チャドの軍事政権は21日、7つの政党事務所を急襲し、活動を禁じた。
野党指導者のひとりであるマスラ(Succes Masra)氏はツイッターに声明を投稿。「治安部隊が我々の事務所に押し入り、略奪している」と報告した。
またマスラ氏は「軍は抗議デモに参加した市民70人以上を射殺し、1000人以上を逮捕・拷問した」と非難した。
国営テレビは軍報道官の声明を引用し、「すべての政治活動を3カ月間禁じる」と報じている。対象はマスラ氏の政党を含む7政党のようだ。
首都ンジャメナを含むいくつかの都市で20日に行われた抗議デモは暴動に発展した。デモ隊は昨年4月に就任したデビ(Mahamat Idriss Deby)大統領代行を国家元首とする現在の体制が2年間延長されることに抗議した。
デビ氏は昨年4月、父親のイドリス・デビ(Idriss Deby Itno)前大統領が反政府勢力「チャド変革友愛戦線(FACT)」との戦闘で戦死したことを受け、軍の最高司令官から大統領代行となり、議会を解散し、軍事評議会を発足させた。
デビ氏は10月20日までに民政に復帰すると約束していたが、軍指導部、反政府勢力、一部の野党政治家、市民団体、酋長など、全国の代表1400人以上が参加した「国民対話」でこの約束は覆された。
複数の現地メディアによると、ンジャメナの治安部隊は実弾を使用し、市民数十人を射殺したという。軍報道官はンジャメナで30人の死亡を確認したと説明したが、活動家はこの数倍の死者が出たと疑っている。
第2の都市ムンドゥでは少なくとも32人が死亡したと伝えられている。AP通信は情報筋の話を引用し、「治安部隊は無差別に発砲した」と報じている。
ケブザボ(Saleh Kebzabo)首相は20日のテレビ演説で武力行使を擁護し、暴動を「クーデター未遂」と非難した。
しかし、欧米諸国は弾圧を非難し、アフリカ連合(AU)のマハマト(Moussa Faki Mahamat)委員長は深刻な懸念を表明している。
マハマト氏は「人命と財産を尊重し、危機を克服するために平和的な手段を行使するよう当事者に呼びかける」とツイートした。
報道によると、チャドでこの規模の暴動が発生したのは数十年ぶり。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、デビ氏が就任して以来、少なくとも2回小規模なデモが行われ、治安部隊が発砲したこともあったという。
チャドは世界でもっとも貧しい国のひとつであり、1960年にフランスから独立して以来、多くの反乱と騒乱を経験してきた。
国連によると、チャドで緊急の人道支援を必要としている人は人口のおよそ3分の1に達し、子供を含む推定550万人が飢えに苦しんでいるという。