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中央アフリカ共和国大統領選、トゥアデラ氏3選へ、ロシアとの連携強化

トゥアデラ氏はロシアとの強い結びつきや、仮想通貨政策で国際的な注目を集めてきた人物であり、そのリーダーシップは国内外で賛否を呼んでいる。
2024年10月4日/フランス、パリ、中央アフリカ共和国のトゥアデラ大統領(ロイター通信)

中央アフリカ共和国のトゥアデラ(Faustin-Archange Touadéra)大統領が12月28日の大統領選で物議を醸す3選を目指して選挙戦を戦っている。

同国では2023年の国民投票で大統領の任期制限が撤廃され、トゥアデラ氏が10年にわたる政権維持を可能とする道が開かれた。トゥアデラ氏はロシアとの強い結びつきや、仮想通貨政策で国際的な注目を集めてきた人物であり、そのリーダーシップは国内外で賛否を呼んでいる。

トゥアデラ氏は68歳の数学者で、2016年に初当選し、2021年に再選された。2018年には治安対策としてロシアの民間軍事会社ワグナルと契約を結び、西・中央アフリカで先駆的な安全保障モデルを打ち出した。その対価として、ロシア側は同国の金など鉱物資源へのアクセスを得ているとされる。こうした関係はその後マリ、ブルキナファソ、ニジェールなど他の国々にも影響を与えた。

また中央アフリカ共和国は2022年にビットコインを法定通貨として採用したアフリカ初の国となり、世界ではエルサルバドルに次いで2番目となった。この革新的な仮想通貨政策はトゥアデラ政権の象徴的な取り組みとして支持者の注目を集めたが、透明性や資産管理の面で懸念を示す声もある。複数の仮想通貨関連プロジェクトや鉱物資源のトークン化計画が進められているものの、国際的な犯罪組織との関係や国家資産の危険性を指摘する報告も出ている。

選挙戦では治安改善とインフラ整備が主要な争点となっている。トゥアデラ氏は治安状況の改善と経済成長率の上昇を強調し、国内での支持を固めるべく多くの集会や式典に出席している。国際通貨基金(IMF)のデータによると、2025年の経済成長率は約3%に達したとの見方もあり、前年の1.9%から改善した。ただし、反政府勢力は全く武装解除されておらず、東部では周辺国からの戦闘員流入など不安定要素が残る。治安改善が進んだ地域もある一方で、暴力の再燃リスクは依然として高いとの専門家の指摘がある。

このような背景のもと、反対派や市民の間では貧困や失業の問題が依然として深刻であるとの批判も強まっている。世界銀行のデータでは、2023年時点で国民の約3分の2が極度の貧困状態にあり、若年層の失業率は高水準であるとされる。これに対し、一部の有権者は「道路や平和が欲しい」といった日常生活に根ざした要求を掲げているが、選挙情勢はなお流動的だ。

国連安全保障理事会は11月、同国の国連平和維持活動の延長を承認したが、米国は短期間の延長を主張し、治安の自国管理への移行を求める姿勢を示した。人権団体はロシア支援部隊に対する拷問や処刑の疑いを含む人権侵害を非難している。こうした国際的な緊張と国内情勢の不透明さは、トゥアデラ政権の信任を巡る争点として今後の選挙結果にも影響を及ぼす可能性がある。

トゥアデラ氏の3選が実現すれば、中央アフリカ共和国の政治的安定と経済発展の道筋は新たな段階に入ることになるが、依然として強い批判と課題が残る中での選挙戦となっている。

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