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リビア東部沖でまた移民船沈没、19人死亡、42人行方不明

この船は9月9日に出港し、その後沈没。5日後に14人が救助されたという。船がいつ沈没し、14人がどのように生還したかは明らかになっていない。
アフリカ北部・リビア沖、移民船(Getty Images)

国連の専門機関である国際移住機関(IOM)は19日、アフリカ北部・リビアの東部沖で移民を乗せた船が沈没し、19人が死亡、40人余りが行方不明になっていると明らかにした。

それによると、この船は9月9日に出港し、その後沈没。5日後に14人が救助されたという。船がいつ沈没し、14人がどのように生還したかは明らかになっていない。

東部トブルク沖では14日にも別の移民船が炎上・沈没し、50人の死亡が確認されたばかりである。

AP通信はIOM当局者の話しとして、「この船はスーダンと南スーダン国籍の難民70人以上を乗せ、9月9日に出港し、その後行方不明になった」と報じた。

IOMは生存者の話しを引用し、「少なくとも42人が行方不明になったとみられる」と報告している。

近年、アフリカ北部のリビアやチュニジアを出発地として欧州を目指す移民が急増している。その背景には政治的混乱、経済的困窮、治安の崩壊、さらにはサハラ以南アフリカからの流入といった複数の要因が絡んでいる。

リビアは2011年のカダフィ政権崩壊以降、統一政府を欠き、複数の勢力が権力を争う中で治安が崩壊した。国境管理も機能せず、密航業者が活動しやすい環境が広がった結果、サハラ以南から北上した移民の中継地となっている。チュニジアもまた、民主化後の政治混乱や経済危機、若年層の高失業率が深刻で、将来に希望を見いだせない人々が欧州行きを選ぶ。特に沿岸部からイタリア南部までは距離が短く、地理的条件が移民流出を後押ししている。

経済的要因も大きい。観光業や石油収入への依存が強い北アフリカ諸国はコロナ禍や国際価格変動に脆弱で、失業やインフレに苦しむ若者が国外を目指す傾向が強まっている。さらにサハラ以南の内戦や貧困に追われた人々が北上し、リビアやチュニジアを経由して欧州を目指すため、出発地としての重要性が高まっている。

一方で欧州側の要因も無視できない。欧州は少子高齢化による労働力不足を抱え、農業や介護分野では移民労働力が不可欠となっている。しかし合法的移民枠は限定的で、多くが危険な密航に頼らざるを得ない。こうして出発希望者は増加し、地中海横断の試みは後を絶たない。

北アフリカから欧州を目指す移民急増は出発国の政治・経済的脆弱性、サハラ以南からの圧力、そして欧州の需要と規制の矛盾が複合した結果である。地中海の移民危機は単なる地域問題ではなく、アフリカ全体の構造的課題と欧州社会の在り方を映し出す現象といえる。

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