リビア沖で移民船沈没、53人行方不明=国連IOM
この事件はアフリカや中東からより良い生活を求めて欧州へ向かう移民や難民にとって危険な地中海ルートでの最新の悲劇となった。
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アフリカ北部・リビア北西部沖の地中海で欧州を目指していた移民船が沈没し、乳児2人を含む少なくとも53人が行方不明になっている。国連の専門機関である国際移住機関(IOM)が9日、明らかにした。この事件はアフリカや中東からより良い生活を求めて欧州へ向かう移民や難民にとって危険な地中海ルートでの最新の悲劇となった。
IOMによると、この移民船には55人のアフリカ出身者が乗船し、リビア西部から5日深夜に出航。約6時間後、洋上で浸水が始まり、北西部沖で転覆したという。現場では沿岸警備隊が捜索・救助活動を行い、2人のナイジェリア人女性が救助されたが、53人が行方不明のままだ。救助された女性のうち1人は夫を、もう1人は自分の赤ん坊2人を失ったと報告している。
地中海ルートは欧州への主要な海上ルートの一つであり、近年多くの船が劣悪な状態で運航され、事故が相次いでいる。IOMは声明で人身売買組織がこのルートで移民を搾取し、耐航性の低いゴムボートなど危険な船を使って利益を上げていると指摘。こうした組織はリビアの混乱した状況につけ込み、多数の人々を危険にさらしていると警告した。
リビアは2011年のカダフィ政権崩壊以来、政治的混乱が続き、国境管理が弱体化している。そのため、周辺アフリカ諸国や中東からの移民や難民が同国を通過し、欧州を目指すケースが増加している。IOMのレポートによると、2026年に入り中央地中海ルートで死亡または行方不明と報告された人の数は2月初めの時点で484人に達し、2025年通年の1300人以上と比べても高水準で推移している。
この事件は、国際社会が長年指摘してきた地中海での移民危機の深刻さを改めて浮き彫りにした。移民や難民がリスクの高い海上移動に頼らざるを得ない背景には、紛争、貧困、失業といった出発国側の要因に加え、合法的な移住経路や保護措置の不足があるとされる。人道団体や国連機関は欧州各国に対して安全で規則正しい移住ルートの整備や救援体制の強化を求めている。
リビアに戻された移民の多くは政府管理下の拘留施設に送られ、強制労働や暴行、拷問などの人権侵害が横行しているとの報告もある。国連の調査によると、これらの慣行は重大な人道的懸念を引き起こし、人身売買ネットワークが被拘束者の家族から身代金を要求するケースも存在するという。
国際機関は今回の事故を受け、移民ルート全体にわたる救援・保護活動の強化を訴えるとともに、欧州とリビア間の協力による移民保護策や人身取引への対策の必要性を強調している。
