紛争地域で待ち伏せ攻撃、兵士14人死亡 ニジェール軍政が発表
ニジェールの治安は近年一貫して不安定な状況が続いている。
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アフリカ西部・ニジェールの紛争地域で身元不明の武装集団による待ち伏せ攻撃があり、少なくとも14人の陸軍兵士が死亡した。軍事政権が14日、明らかにした。
それによると、事件は先週、サヘル地域の砂漠地帯で発生。軍部隊はオートバイに乗った武装集団が集落を襲撃するという情報に基づき、現地に向かう途中、待ち伏せ攻撃を受けた。
軍政の報道官は国営テレビで、「この強盗未遂は軍のパトロール部隊を誘い込むおとり作戦だった」と語ったが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。
ニジェールの治安は近年一貫して不安定な状況が続いている。同国は西アフリカ内陸部に位置し、サハラ砂漠とサヘル地域にまたがる地理的条件を持つが、その広大な国土を十分に統治・管理できていないことが治安悪化の根本要因の一つとなっている。特に国境地帯は長大で管理が難しく、マリやブルキナファソ、ナイジェリアと接する地域ではイスラム過激派や密輸ネットワークが自由に出入りしている。
最も深刻なのは、イスラム過激派によるテロと反乱である。ニジェール西部ではマリから拡大した「アルカイダ系」や「イスラム国(ISIS)系」の武装組織が活動しており、村落襲撃や地雷攻撃、治安部隊への奇襲が相次いでいる。また南東部のディファ州では、ナイジェリアを拠点とする「ボコ・ハラム」や「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」が断続的に活動を続けている。こうした武装勢力の存在により、多数の民間人が殺害され、数十万人単位で国内避難民が生じている。
加えて、治安部隊自体の能力不足や腐敗も問題となっている。政府はフランスや米国など西側諸国の軍事支援を受け、ドローン基地や特殊部隊の展開を許可してきたが、それでも国土の広さに比べて兵力は限られ、武装勢力を完全に封じ込めることはできなかった。むしろ一部地域では、治安部隊の強硬な取り締まりが住民の反感を招き、武装勢力に取り込まれる要因となっている。
さらに、政情不安も治安環境を悪化させている。2023年のクーデターで政府が崩壊し、軍事政権が成立したことで、西側諸国との協力関係は揺らぎ、治安維持の枠組みにも不確実性が生じている。周辺のマリやブルキナファソ同様、反仏感情を背景にロシアとの接近が強まっているが、それが治安改善につながるかは不透明である。
また、ニジェールは世界有数のウラン産出国であり、その輸出ルートや鉱山周辺の安全確保も重要課題となっている。資源を狙った犯罪組織や武装勢力の脅威は絶えず存在し、経済基盤を揺るがす要因ともなっている。
ニジェールの治安はテロ、国境管理の脆弱さ、治安部隊の限界、政情不安が複雑に絡み合うことで深刻な不安定状態に置かれている。短期的に大幅な改善は見込みにくく、国民生活や地域の安定に大きな影を落とし続けている。